はてなダイアリーでは「へぴゅーNT/というわけで(ry」だった何か。
まとまった文章が中心。日々の短文はmb(ryにあります。

Influence

恒例の年末更新(如何にして自分は突然AI驚き屋と化したか)

ついさっきめちゃくちゃ遅刻しながら社会人学生アドベントカレンダーの記事を上げたばかりですが、恒例の年末まとめ更新もいちおう恒例なので書いて投げておこうと思います。

  • とは言え、今年はUoPeopleのコンピュータサイエンス学科を卒業、Georgia Tech OMSCS (Online Master of Science in Computer Science)出願&合格、OMSCS最初のターム振り返り、ですでに3記事も書いているので、ここに書きやすい、本業以外のことは大体書いてしまっている感じも。
  • ちなみに毎年この年末記事で言及している年末恒例大学の同期忘年会(地味に今回20回目)も恒例な感じで昨日オンライン開催。今年は自分がある種のAI驚き屋となったためにシンギュラリティネタなどをばんばん放り込む。そうでないと大体、家族(子供)の話か投資(家計)の話か職場環境の話になりがち。そして自分はそのどれにも興味がない(職場は自分以外が全員民間企業なので話があわないのもある)。
    • 他の人の家計の話を散々聞いた後に「みんな給料明細とか見てるのか!自分は年間いくらもらってるかも知らないのに!」とか言い放つポジション。

自分を構成するメインの要素である本業=大学での研究活動は今年もある意味で低調だったのですが、ChatGPTの出現と自分のUoPeople卒業/OMSCS入学が重なったことで奇妙な方向に勢いを得ている(今も)状態です。

  • かつて20代の時、一度目の学部を出て修士に入ったときの、あの身体全体に満ち満ちる激しい「何か」を再び経験する。2度目の修士でも、40代でも、教員をやりながらでも、通うのがオンラインであっても、どうやら関係ないらしい。
  • 「何か」を形容するのは難しい。平たく言えばエネルギーとか、活力とか、そういうものだけども、もう少し記述するなら、「学部という知識の詰め込み=学問の助走を終え、数年かけて一つの何かを成したという達成感と、頭の中に作り上げられつつある学問体系がかみ合って、修士という次のステージで走り出したい渇望のような何か」で、それが今にもほとばしりそうに体の中に満ちている感覚。
  • これが生成AI(LLM及び拡散モデル)という新しい分野、さらにそれに関連した本業分野での激烈な進歩、およびたまたま7月にあったとある小規模な学会の招待講演の機会と結びつき、不思議なことが起こったように思う。
    • 学会のタイミングが絶妙だった。話が決まったときは2022年秋でまだ生成AIは話題になる前、要旨とタイトルを出すころは2月末で生成AIは知ってる人は知っていて大騒ぎが始まったころ(ここで生成AIのことをほとんど何も知らないが生成AIというキーワードをタイトルに放り込むことを決める=にわかプロ驚き屋の爆誕)、講演があった7月初めには全員知っているというタイミング。

おそらく、本業分野の人たち、特にAIを前から使っていた人が今年の自分の様子を傍から見ていれば「ただのAIにわかが、いきなりプロ驚き屋みたいな真似をしている」ように見えるはずです。

  • にわかなのも、驚き屋なのも、確かにそうで全く否定しない。しかし残念ながら、自分の「にわか」も「驚き」も実は学部卒業と修士進学に伴う「学生ゆえの未熟さと学生が感じる新鮮な驚き」の成分が相当にあるので、ただのバイオ出身准教授が騒いでいるのとは少しだけ違う、はず。
    • いくら長いこと生物と情報の学際領域にいるとはいえ、バイオ系列の准教授がいきなり生成AIとか言い出したら誰もがいぶかしがるだろうけども、CSの学部を出て修士に入りたての学生が生成AIに関心を持つのは当然で、突然貪るようにarXivを読みだしても別に変ではない。そしてこれまでの研究経験による論文読みこなし術がChatGPTの圧倒的CS知識+驚異のチューター能力と合わさり、貪り速度を爆速にする。これまでろくにPytorchもTensorFlowも触ったことがないけども、ChatGPTの助けを得て狂ったようにモデルの実装を読んでいく。

来年はこの満ち満ちた何かをちゃんとコントロールして、修士学生なりの成果に落としたいところです。

  • バイオ出の准教授としての自分と、CS学生としての自分を上手に対話させたい。たぶんChatGPTがあればなんとかなる。
  • こういう状況を踏まえ、ある種プチインフルエンサーのような挙動をしていた(している)自分を指して今回のタイトルはInfluenceとした。これが本当の意味できちんとしたInfluenceへと変化していってくれれば。

というわけで(ry

First Grade from OMSCS

ジョージア工科大学オンラインコンピュータサイエンス修士課程(OMSCS)の最初のTermが無事終わった

このエントリは社会人学生アドベントカレンダー2023の12/14分です。成績が出るのを待ってたらアップロードがおそくなってしまった…。

状況としてはタイトルの通りです。2023年1月にUoPeopleを卒業、3月にOMSCSに応募、4月末に合格通知で、8月末(Fall)から最初の学期でした。同じオンラインの大学(大学院)ですが、科目登録から成績評価まで、UoPeopleと仕組みがかなり違って苦労しました。

このエントリでは、履修科目決め→登録→受講→成績評価までを雑多に記録したいと思います。ちなみに履修した科目は Machine Learning for Trading (略称 ML4T)で、約94点でAを取れました。

ちなみに、UoPeopleの卒業までの3年間については

mbr.hatenadiary.jp mbr.hatenadiary.jp

また、OMSCSの応募については mbr.hatenadiary.jp

もご参照ください。

思ったより長くなったので以下目次です。

最初のTermに何を取るべきか

念願のOMSCS合格!早速好きな物を取りたいところですが、OMSCSには以下の縛りがあります。

All applications are reviewed by a faculty committee to ensure that those admitted can succeed in the program. Applicants who are selected for admission will be conditionally admitted into the degree program and must pass two OMS CS foundational courses with a grade of B or better within a year from when they matriculate to be fully admitted.

FAQ | OMSCS | Georgia Institute of Technology | Atlanta, GA

要は最初の1年はお試し期間で、それなりにいい成績を取らないと駄目なのです。Bは基本的に80点以上です。あと、卒業にあたってはGPA3.00以上、ただし専攻必修科目はB以上、専攻選択科目はC以上という縛りがあります。厳しい。

また、科目数については最初のTermに2つ以上とるのはオフィシャルに推奨されていません。ただ、もともと2科目以上とるつもりはなかったので、これはあまり問題になりませんでした。1Term1科目だと3年半くらいかかりますが、別に急いでないですし。

さらに、新入生はPhase2という、学期開始のぎりぎりの登録期間にしか登録できないので不利です。事前の登録期間(Phase 1)で人気の科目(往々にして簡単な科目)はもう埋まってるので、さらに選択肢の幅が狭まります。

以上の条件を踏まえて、滑り込めばまだ何とかなりそうな科目をomscs.rocks を食い入るように眺めることで、Machine Learning for Trading に決めました。Trading全く興味ないんですが。本当は専攻(Specialization)を決めて、それに沿った科目を取るのが筋なのですが、この時点ではInteractive IntelligenceとMachine Learningの間で決め切れていなかったので、とにかく履修登録できて点数が取れそうな科目にしました。

ちなみに公式っぽいこのサイトhttps://critique.gatech.edu/ では、科目を落とした学生の割合などもわかるので難易度を見極めるうえでお勧めです。

激戦の科目登録

UoPeopleのときも科目登録はかなり大変で、希望の科目がとれないというのはよくあったのですが、OMSCSの場合はそもそも科目が少ない(提供している科目だけでなく、卒業までに10科目しかとらなくて良い点も含めて)なので、科目登録はより激戦でした。

なので、事前情報を基に科目登録を最速で実行するストラテジーを考えて実行しました。以下は、実際に自分がやった方法です。

あらかじめ、システムが重くなる前、具体的には登録開始時間の10分くらい前に科目登録システムにログインしておきます。適当にページをリロードとかしてログアウトを防ぎます。時間が近づいたら、omscs.rocks にあるCRNという各コースに完全にユニークな番号をコピペしておいて、23時になった瞬間に科目登録システムのCRNの検索窓(普通の検索条件とは別のタブ)に叩き込み、出てきた画面でRegisterを迷わず押します。これで2分以内に登録できます。

CRNさえあっていれば大丈夫なので、ここで悩んではいけません。下手にコース番号で科目検索とかするとオンキャンパスの同名科目が出てきたりして危険です。CRNを信じろ。

ちなみに、自分の時はML4Tの定員は1300人で、Phase2開始時点で空きが300くらいあったはずですが、5分でいっぱいになりました。怖いですね。来期の登録もPhase 1のときにしましたが、これもまた人気の科目は凄い勢いで埋まるので、23時(冬時間の時は24時)待機推奨です。

定員があふれてもWaitlistで待てるらしいのですが、空きが出来た時に12時間以内に登録しないと順番を飛ばされるという話も聞いたので、時差を考えるとちょっと危険だなあと個人的には思っています。

興味持てな過ぎ&ペース掴めなさ過ぎて困る

なんやかんやで学期が始まるとLMS(Learning management system)にログインするわけですが、ここでまた新しい仕組みに遭遇します。具体的にはUoPeopleのLMSはMoodleでしたが、OMSCSはcanvasです。あとはOMSCSではGradescopeという、コードの自動実行・採点システムが別にあります。すごい。

また、UoPeopleはどの科目も同じような仕組み(Discussion Assignment、Written or Programming assignment、Exam、Self-Quiz、Learning Journal)ですが、OMSCSはコースによって形式が違うので戸惑います。ML4Tは基本的にProject(プログラミング and/or レポート)が71点分と試験が25点分です。Quizとコースサーベイがそれぞれ全体で2点分ずつあるので、毎回忘れずにCanvasにアクセスする必要があります。ただし、Quizはそれほど教材に即している感じでもないので、毎週アサインされた資料読みはサボろうと思えばサボれる→課題や試験の直前に慌てて溜めていた分を消化して課題・試験に臨む、という感じで学期中ずっとペースをつかめず苦労しました。課題の配点も3点のものから20点のものまであって、配点の大きい課題をやっているときはストレスフルでした。

また、毎週月曜日にTAセッションという、課題の解説やリアルタイムに質問に答えたりしてくれる時間があるのですが、1秒も参加しませんでした&録画も見ませんでした。TAセッションとは別に、学生が質問できるテキストベースのフォーラムで他の受講生が質問しまくっているので、それを見ながら良い感じにProjectを進めると楽です。

あと、ML4Tは成績がつくのが物凄く遅いです。Redditとかでもたまに話題になってますが地獄の遅さです。これにより、自分が正しく課題をこなせているのか不安になります。さらにML4TはプロジェクトのInstructionが絶望的に複雑です。プロットの線の色まで指定されて、あってないと減点です。この点はいろんな口コミサイトで指摘されていて、ふーんとしか思ってなかったのですが、いざ自分がやろうとすると本当に洒落にならないレベルで複雑です。まず間違いなく1度はキレます。おそらくですが、過去のいろいろな積み上げやフィードバック、採点上の都合などで厳密さを追求するうちに複雑怪奇になったものと推察します(そしてたぶんこれからも複雑になり続ける)。これは、講義を作る側としてはやってしまいがちなので気を付けたいですね…。対応策としては、検索を駆使したり、ChatGPTにぶち込んで要約してもらうのが良いです。

ただし、ML4Tは毎期1300人と受講生が非常に多いので、ネット上に良いまとめ記事が落ちていたり、他にも参考になるものが色々見つかるので、それを駆使すればなんとかなるように思えました。

試験監督付き試験!だけどHonorlockはProctorUより簡単

ML4Tは中間と期末の2回試験があって、あわせて25点分を占めています。この辺はUoPeopleとあまり違わないです。UoPeopleのときは4択問題でしたが、こっちはTrue/Falseを選ぶ形式でした。実は、今年から試験形式が変わったとかで、これまでは5択か4択の問題が20問程度(各問題に対して正解の選択肢は1つだけ)だったものが、22問の問題の5つの選択肢のそれぞれに対してTrue/Falseを選ぶように変わった(実質110問)ので負担が激増しました。その代わり、持ち込み可(Open-book)で時間も延びたようなので、難易度はそこまで変わってないのかもしれません。

ちなみに、試験監督ツールとして使われているHonorlockはProctorUと同じく、ブラウザの拡張機能として入れるツールで、画面共有とカメラで不正してないか監視する感じです。でもProctorUと違って人間を介さないっぽいので事前の予約が必要ないですし、部屋の中を全部見せたりする必要も無かった(少なくともML4Tでは)ので、かなり楽でした。

うっかり和文Transcriptを送り忘れたことに学期途中に気づく

ちなみに、OMSCSは入学手続きの時は基本的にオファーをAcceptしておけばよくて、最初のTermが終わるまでに必要な学位の証明書の原本などを送ればよいのですが、ここでうっかり英文だけでなく和文の証明書も必要であることを(どこかで読んだのに)忘れていて、ばたばたしました。7月に英文証明書をEMSで3000円くらいかけて送ったのに、10月頃にもう一度、和文証明書を3000円かけて送ったので、多少お金が無駄になりました…。ちなみに証明書が間に合わないと、来期の履修登録ができない(Hold)というペナルティが発生します。自分は(2度目の送付の際、ApplicationのときのNumberをEMS送付状に含め忘れたりして手続きが遅れたりしましたが、別途担当部署にメールしたりして)ぎりぎりなんとかなりました。

来期どうするか

前述の通り、最初の1年でFoundation course 2科目B以上の縛りがあるので、比較的簡単と言われていて、かつかなり自分の側に予備知識があるNetwork Science(NetSci)にしました。メインの教科書らしきBarabasiの本も持ってるし、今度は興味もあるし。まあ専門の分子生物学以外のネットワークはあんまり興味ないけど…(Social networkとか)。

一応、本業の方でも大学院講義でちょっと触れているのと、ちょうど時期的に来Termが終わったころに本業の方の講義があるので、大学院で学んだことを大学院で教えるという素晴らしい好循環を目指す予定です。やったね。

さらにその次の学期、Summerはいつもより学期が短い&開講している科目が減るため何を取るべきかちょっと迷っています。夏学期おすすめ科目といえばML4TとNetSciなんですが、もう取っちゃってるし…。Computer NetworkとかAI - Ethics Soceityあたりも良く名前があがるのですが、また科目登録が激戦なのでどうしたものかなと思っています。無事1年を乗り切ったら、その次の秋学期は地獄と名高い必修科目のMachine Learningでも取ります。

Accepted to OMSCS at Georgia Tech (via UoPeople CS)

UoPeopleのコンピュータサイエンス学士を経由してGeorgia Techのオンライン修士課程OMSCSに合格した

タイトルに嘘偽りはありませんが、簡潔すぎて大いに誤解を招くのできちんと説明すると、

「バイオ系の博士卒なのですが、30代前半で大学の助教になったときにうっかり情報系に来てしまって以来、バックグラウンド(専門)の違いで大いに苦労しているので、40歳目前で米国オンライン大学のUniversity of the People(UoPeople)に入って3年かけてコンピュータサイエンス(CS)を修め、それを足場にようやくこの春、ジョージア工科大学(Georgia Tech)にあるコンピュータサイエンスのオンライン修士課程ことOMSCSに入れてもらえることになりました」

が正しいです。期待していた方たいへん申し訳ありません。

  • UoPeopleはまだNationally Accreditedなので、UoPeopleの学士だけではOMSCSの出願要件を満たしません。自分の場合は日本の非CS学士(バイオ系)との合わせ技です。
    • 早くRegionalに格上げされてほしい。そうしたらUoPeople→OMSCSの格安CS修士パスが完成するのに。

正直なところ、ここに至る経歴が変過ぎて自分の例を出しても誰の参考にもならないとは思いますが、OMSCSのFall2023 admissionがどんな感じだったか、UoPeopleからOMSCS(やその他大学院)を目指す時にはどんなことがあるのか、という点で自分の出願エピソードとタイムラインを情報として投下しておきます。

  • 一応補足として、OMSCSは「大学院で最低限やって行けるだけのCS知識を持っている事」が入学の条件なので、基本的にはRegionally Accreditedな大学のCS学士&良いGPAを持っているのが好ましく、そうでない場合はケースバイケース(=職歴だの資格だの、卒業には至らないけれども大学で取った単位だのを寄せ集めた情報)で判断されるよう。
  • 自分の情報系の職歴としては、大学の情報系の学科で助教&准教授あわせて8年半ということになるのだけども、Reddit等を見ているとOMSCSは時に実務経験よりも取得科目を重視することがあるようで、そういう意味ではUoPeopleがフォーマルなCS教育の全てで、MOOC等は一切取っていない。また、現在の職である大学の教員はあくまで学生を指導するのであって自分で手を動かすわけではない(そして自分で手を動かす場合は必要最低限のRuby or Rスクリプトしか書けない)ので、大学院に入るに値するような実務経験かと言われると非常に疑問。その一方で、CSの基礎知識は大部分をUoPeopleから得ている。
    • というわけで果たして自分が情報系の教員をそこそこやっているという職歴で加点されたのか、UoPeopleのCS学士が効いたのかわかりませんが、とにかく「こいつ大丈夫じゃね?」と思ってもらえたようで合格できました。

前振りが長くなりましたが以下目次。

出願に必要だったあれこれ

TOEFL(ひょっとしてUoPeople卒なら不要だった?)

当然必要なのだろうと思って受けました。30代の頃にかなり集中して英語学習に取り組んだ(一日2~3時間を1.5年+1年くらい)のと、UoPeopleで英語に慣れているので、特に準備せず受けて108点と問題ないスコアが出ました。

ところが出願が終わって良く見てみると、不思議なことに提出済み書類欄のなかのEnglish Proficiency satisfied by TOEFL の下に、 English Proficiency satisfied by academic history なる文言があることに気づきました。

日付から推察するに、この日は応募フォームを記入していて、そこでUoPeopleの卒業日を入れたのではないかと思います。一度目の大学(学士・修士・博士)は日本の大学なので、他にacademic historyで免除になる要素はないはずです。

一応、Georgia Techのウェブサイトによると、Regionally Accreditedの大学に1年フルタイムで通った場合、英語試験が免除になるとはあるのですが…UoPeopleはNationally Accreditedですし、完全オンラインでフルタイムという概念があるのか不明な大学ですし、よくわかりません。

もう応募してしまった後でしたし、TOEFLの点も出してしまった後だったので深追いはしませんでしたが、もしUoPeopleを卒業後にGeorgia Techに行く場合はこの免除が適用になるのか、念のため確認してもいいかもしれません。自分のように先に英語をやり込んである場合は別ですが、出願準備の一環としてTOEFLに取り組む場合、90点やら100点やらはかなり大変なはずなので、これが免除になるのは大きいです。

  • この点からもぜひUoPeopleにはRegional accreditionを取ってほしい…。

履歴書

昔、アメリカに博士研究員として渡った際に簡単な英文の履歴書を生成して以来、それをちまちまと更新していたので、それを使いまわしました。体裁とかきれいなほうがいいのかもしれませんが、最低限の要素をおさえていて、見やすければなんでもいいとは思います(自分のは他人の見よう見まねで作ったものなので、デザインはほんとにしょぼいです)。

OMSCSは確か志願者数が1回につき3000~4000人という規模だと聞いていたので、長いCVは読まれないだろうと思って出来る限り短く収めることに注力しました。

  • 全4ページ。1ページ目には学歴・職歴に加えて、これまでの担当講義科目(=スキルセットの列挙の代わり)、2ページ目に指導した学生のテーマ列挙(=これまでに関わったCS系プロジェクトの一覧みたいな気分で)、3ページ目に論文リスト(=一応大学院という研究機関への応募なので、CSっぽくない論文ばかりでもリストはあった方が良いかと思って付けた)、4ページ目に獲得した研究費や賞など(=これも分野違いでもないよりはましかと思って付けた)。
    • 普段は、学歴→職歴→論文リスト→研究費&賞(→査読歴)→担当科目等々、のような感じで論文と研究費を先に並べるのだけども、今回はCS力をアピールするために担当講義や学生のテーマ一覧を新しく設けて先に列挙した。
  • ちなみに、どこかの注意書きに「GPAが出ない大学は履歴書にそれに類する数字を書いておけ」とあったので、日本の大学の分は頑張って自力で平均点を出して、学歴のところにつけました。また、応募フォームで学歴を打ち込むときは「公式のGPA以外は数字を書くな」とあったので、そこは空欄にしました。
  • どうでもいいですが、アメリカに送るのでLetterサイズの紙の方が良いのかと一瞬思いましたが、面倒なのでA4にしました。

学位証明

UoPeopleは卒業手続きをすると卒業証書と一緒にTranscriptが一通ついて来るので、それをスキャンしてアップロードしました。Transcriptは基本的に成績証明書ですが、最初に学位取得年月日(conferral date)が書いてあるので、これ1つで十分でした。あとTranscriptはDiplomaより厚い紙で立派でした。すごい。

  • 卒業手続きから出願まで2か月しかなかったので、120ドル払って確実かつ速く届くようにしておいた。Reddit情報では、UoPeopleからの書類は普通郵便だと数か月かかるとか、途中でロストするとか色々あるようなので。

日本の大学は郵便で取り寄せてスキャンしてアップロードしました。この大学の成績証明書は学位取得年月日が入っていないので、学位取得証明書を別に取得して成績証明書とあわせて一つのPDFにまとめる必要がありました。

  • あと学士・修士・博士の全てについて書類が必要だったのもちょっと手間だった。

推薦状3通(うち1通はUoPeopleの先生)

まず2通は現所属の上司(教授)と博士の時の指導教員の先生(教授)にお願いしました。博士の時の先生はUoPeopleに行っていることも知らなかったので、非常に驚いていました。そりゃそうだ。

  • OMSCSの公式ページでは「推薦状は応募者のCS能力を証明するためのもので、熱意とか頑張ってるとかそういうのはいいから」という文言があるので、それに合うように人選。
  • とはいいつつも、上司も博士の時の先生も、自分がプログラミングをバリバリやっているところを見ている訳でもない(そもそもそんなに書けない)ので、博士の時の先生には「この子はバイオ出身だけど頑張って統計とか独学してたし、研究室のサーバ管理してるRootユーザだったよ」と言ってもらい、上司には「こいつはバイオ出身だけど、うちの研究室のCSの学生と機械学習とか自然言語処理のテーマとかやってるよ」と言ってもらうことで、なけなしのCS力を証明して貰いました。弱い実務経験…。
    • 今時、機械学習はライブラリを使えばかなり簡単にできてしまうので、意外とサーバ管理やってた等々のエピソードの方が良いのでは?と勝手に思っています。まさか15年?前にNISサーバだのDNSサーバだの立ててたエピソードがこんなところで生きるとは。
    • 実はこの二人には「英語で下書きが欲しい」と言われた(それ自体は別に珍しくも無いので想定内だった)ので、ChatGPTに「大学の先生として院進学の推薦状を英語で書いてね!以下が候補者の情報だよ」という感じで日本語で上のような内容を一気に殴り書きして、英語で良い感じの文章を吐いてもらいました。ありがとうChatGPT!
      • また、この下書きを基に加筆した最終版を見せてもらったので、それをAI判定器にかけたら、ChatGPTが書いたところではなく先生が加筆した所や、先生の署名(!)がAI判定されたりしてかなり面白い感じになった。おそらく日本語から訳したものは完全に自動生成した文章と傾向が違うので検出できないのだろう。

最後の1通は誰から貰うか迷いましたが、思い切ってUoPeopleの先生にお願いしました。卒業直前に取ったInformation Retrievalの先生にUoPeopleのMoodle経由で事情を説明してお願いした所、二つ返事で引き受けてくれて、こちらの履歴書も送って見てもらって書いてもらいました。

正直なところ、この方の推薦状がどの程度有効だったのかは分かりません。なにせUoPeopleは完全オンラインかつクラスが大きめな分、先生はひたすら大量の学生をさばく感じなので、ある1Termだけ自分のクラスにいた個人についてどれほどのことが書けるかというと疑問です。

ただ、この先生以外の二人はバックグラウンドがCSではなく(物理とか化学とか)、自分にCSを教えた人でもないので、できればCSの人から1通は推薦状が欲しかったのと、Information Retrievalは自分が大学院で特にやりたい(と志望動機のところにも書いた)自然言語処理人工知能にも近いので、全然関係ない分野の先生から貰うより良いだろうと思って決断しました。あと成績も良かったし。

  • Data Mining and Machine Learningの先生に貰っても良かったのだけど、1年近く前に科目を取ってしまっていて、そんな昔の学生の推薦状は書きにくいだろうと遠慮してしまった。もし成績がずば抜けて良ければ、Artificial Intelligenceの先生にお願いしても良かった。

Webでの必要事項の記入

昔は履歴書に加え、BackgroundとStatement of Purposeについて少しまとまった量を書いて提出する必要があったはずなのですが、今はもうありません。以下の質問に答えたら終わりでした。とにかく短い。審査する先生方がいかにこれまで苦行を強いられてきたのかが、このそぎ落とされた質問群から伺い知れます…。ちなみにObjectiveでは該当がなければNoneと書けばOKです。

Objectives

  • Briefly describe your eventual career objective. (e.g., University Professor, Industry Researcher, etc.). 150 characters
  • Describe your CS-related academic experience. 200 characters
  • List any CS-related minors (or equivalent ACADEMIC certificates) earned with your academic degree. Enter "None" if none. 150 characters
  • If you have a non-CS/Computer Eng./Electrical Eng. Degree, list ALL (both undergrad & grad, if applicable) CS course titles that you took for ACADEMIC credit. 300 characters
  • Describe your CS-related internships, if any. 200 characters
  • Describe your CS-related post-undergraduate degree work experience. 250 characters
  • List your earned degrees and any minors. E.g., "B.S. Space Science with Math minor, Ph.D. Computer Science." 50 words
  • Explain in ONE sentence your purpose in studying in the OMSCS program. 50 words
  • Explain in ONE sentence how the OMSCS degree will benefit YOU. 50 words
  • Explain succinctly why your academic credentials and your CS-related experiences have prepared you for rigorous, graduate-level academic CS work. 60 words
  • Explain, IN DETAIL, a poor undergraduate GPA (and poor graduate GPA, if applicable) and why you would do better in rigorous graduate classes. "Poor" is defined as less than a U.S. institution's 3.0/4.0 or the analogous equivalent for a non-U.S. institution. 100 words

このうち、おそらく書くときに難しさを感じるのは、career objectiveやyour purpose in studying OMSCS、 あとはOMSCS degree benefitの辺りではないでしょうか。自分の場合すでにcareerがかなり確立してしまっているのと、degreeを持っている事そのものが昇進や転職などの利益になるわけではないので、「バイオ出身だけど研究分野の幅を広げたい!CS寄りのバイオインフォマティクス研究をやって生命科学を爆速で発展させたい!」「現役CS教員だけど学部も修士も博士もバイオだからもっとちゃんとCSのバックグラウンドが欲しい!」「ここで修士取ればCSの教員として自信を持てる!得た知識でもっとCS寄りの研究ができる!」みたいなことを素直に書きました。

  • とにかく50 wordsでは何も書けない(かといって履歴書に盛り込んでも読まれないだろうから、書き足りない分は上司の推薦状の方に入れ込んで貰いました)。

個人的なタイムライン

~2019年前半 OMSCSの存在を知る。この時点でTOEFLは102点あったが、CSのバックグラウンドが無く、学生指導・担当講義という点を含めても関連する実務経験がほとんどなかったので、おそらくこのままでは入れないだろうし、入ってもついていけないだろうと諦める。

2019年12月31日 UoPeopleの存在をはてなブックマーク経由で知り即入学する。UoPeopleはNationally Accreditedなのでそれだけでは要件を満たさないが、日本の大学卒と組み合わせることでOMSCSの足掛かりにできないかと密かに計画する。そういう意味では、自分のOMSCS出願準備はここから始まったと言えなくもない。

2023年1月11日 無事120単位を揃えてUoPeopleの卒業ボタンを押す。

1月14日 卒業を見越して前年8月の時点で予約しておいたTOEFLを受ける。受験直後のRとLのスコアで、出願資格を満たしそうだと確信し、3月15日出願を目指す。まずは適当にフォームを埋める。

1月21日 TOEFL結果出る。推薦状の手配を始める。日本の大学の学位証明の手配も始める。

2月4日 UoPeopleから書類が届く。

2月中旬頃 ChatGPTとAIの威力に今更気づく。これからAIがますます強力になっていくなかで、大学院で何を学び、今後どうしていきたいか、これまで漠然とcareer objectiveに書こうと思っていた事柄が、もはや幼稚な戯言に変わってしまったのをようやく理解しショックを受ける。情報系としての今後のキャリアも含めて、真剣に何をすべきか考え直し始める。しばらく準備が手つかずになる。

2月下旬 日本の大学から書類が届く。

3月初め これまでの人生で感じた、情報系とバイオ系にまつわる多くの事を振りかえり、このAIの大波の中で自分が何をしたいか(=世界が今後どうあっていて欲しいか)の言語化にようやく成功し、career objectiveが定まる。

3月上旬 実務経験の弱さ(=あまりCSスキルが高くなく、自分自身ではCS色の弱い研究しかしていない)をカバーするために、履歴書で担当講義科目と指導学生の研究テーマを列挙することを思いつく。改めて整理したところ、学生指導の数が2019年の時点から爆増していただけでなく、内容もバイオ成分がかなり薄まっていて、機械学習を使った多様な応用研究という感じのリストになった*1ので、これはCSの学生とCSライクな研究をしていると言って構わないだろうと開き直る。

3月15日午前1時ごろ 応募する。その後の自動返信メールで、今回の合格通知期間は3月27日の週から5月末までらしいと知らされる。

3月27日 Redditで合格発表の第一陣が届いているのを観測する。

4月初旬~中旬 どうやら今回は毎週月曜日に通知がリリースされているようだが、自分の所にはぜんぜん来ないので駄目だったのかと思い始める

4月24日午後11時 申請ウェブサイトをリロードしたら通知を発見し感激する

 

とりあえず今は入学手続きを間違えないか不安なのと、1年目の成績が悪すぎてドロップアウトしないかが心配でしょうがないです。

  • 易しい科目を血眼になって探してみたり、「でもみんなの言う易しいは自分にとって易しいではない可能性結構あるからな…そもそも新入生は履修登録すごい後だから空いてるところに行くしかないし…」とぼんやりしてみたり、の繰り返し。

*1:この辺、事情を知っている人たちからは「なぜそんな大幅に専門(バイオ)を逸脱した多様な分野を指導できるんだ」と言われたりする。

Graduation from UoPeople

University of the Peopleで3年かけてコンピュータサイエンスの学士を取った

…厳密にはまだ卒業ボタン(Graduate Audit Request)押しただけなので、卒業プロセスが始まったばかりですが。

そんなわけで、巷で度々話題になっている気がする例の授業料無料の米国オンライン大学ことUniversity of the PeopleのCSコースを無事終えました。二つ前の、3年間の振り返りエントリで書いていた最後の2科目の単位が無事に取れたので、合計単位が120単位になりとうとう卒業ボタンを押す運びとなりました。長かった。

  • すべてはこのブックマークから始まった。
働きながら米国のコンピュータサイエンスの学士号を取得する、UoPeopleという選択肢 - Velocity

これはいいなあ。一応今CSの教員だけど大学での専門が生物でCSは独学だから、色々と抜けがあって困ること多いんだよね。ちゃんと大学のカリキュラムに沿って学べるの良い。英語の要件も低い。/さっきenrollしてきた!

2019/12/31 12:17

b.hatena.ne.jp

善は急げと言えども、急ぎ過ぎの感も結構ある。新年の計は元旦ならぬ前年の大晦日にあり…。

  • 確か大晦日の朝にブログ記事読んで、少し考えてすぐenrollしたはず。ほとんど迷ってない。

ちなみに、成績は奇跡的にCGPA4.0で終えられました。

一度目の大学の時は、一年次の数学・物理・化学系の科目に派手に足を引っ張られていたのでふるわなかったのですが、今回はいろいろと恵まれて何とかなりました。

  • 実は、一科目だけ少し点数をおまけしてもらった科目があったり。Analysis of Algorithmsという科目でどうしても完璧にできなかった課題があり、GPA4.0を維持するための点に0.5点足りなかった(92.5以上を取らないといけないところを確か最終得点92.05点とか)ことがあるのだけど、最後の最後で先生が「がんばってたから」と件の不完全な課題の点を少し上方調整してくれて92.5点を越えさせてくれた。結果、そのおかげでGPA4.0を維持して卒業できた。担当だったRupali Memane先生、本当にありがとうございました。

そんなわけで、前回の予告通り今回は履修科目や費用、学習ツール等の実用的な?あれこれを列挙してこうと思います。それ以外の要素、これを書いている人間がどういう属性か&3年間にわたる履修がどんな様子だったかは、前回の振り返りエントリをご参照ください。UoPeopleに入学したモチベーションなどもそちらに掲載しています。

以下、長いので目次。

履修科目・履修順

毎期2科目・6単位固定、15Termをぶっ続けで受けて90単位を積み上げました。残りの30単位は2年目の終わり(2022年1月)に一度目の大学から一括で移行しました。

  • 単位移行の記事はこちら→Transfer Credits (to UoPeople) - Segmentation Fault
    • 他の履修生はSophiaなどの外部スクールで(時間のある時の短期間の詰め込み等で)単位を取って、単位移行をしたりすることも多いようなのだけど、自分はめんどくさかったのと毎週課題をやる方がスケジュールにあっていたのでやらなかった。
    • 結果としてCS必修科目を全部UoPeopleで取った形に。UoPeopleのCSちょっと詳しい。
  • 最初のうちは120単位全てをUoPeopleで取る予定だったので、専門+教養の構成で取っていたが、単位移行で教養や選択科目を埋める事を考えてから(2021年9月以降)は専門(簡単)+専門(難しい)の組み合わせでやりこなした。

各科目の難易度は、正直なところ他の学生から前評判を聞くより、自分でシラバスを見て考えた方が正確だと感じました。実務経験がない自分にとってはSoftware Engneering 1で悶絶したり、簡単(中身がない、古い)と評判のWeb Programming 2でも少し手こずったりすることがある一方で、前提知識があるData Mining and Machine Learning, Information RetreivalやComputer Graphicsは相当簡単でした。

 

Term Course 1 Course 2
2020/1

Online Education Strategies
UNIV 1001

A

Programming Fundamentals
CS 1101

A+
2020/4

Programming 1
CS 1102

A English Composition 2
ENGL 1102
A
2020/6 Programming 2
CS 1103
A Introduction to Philosophy
PHIL 1402
A
2020/9 Computer Systems
CS 1104
A College Algebra
MATH 1201
A
2020/11 Introduction to Statistics
MATH 1280
A Emotional intelligence (EI)
PSYC 1205
A
2021/1 Operating Systems 1
CS 2301
A Greek and Roman Civilization
HIST 1421
A
2021/4 Ethics and Social Responsibility
PHIL 1404
A Software Engineering 1
CS 2401
A
2021/6 Databases 1
CS 2203
A Introduction to Environmental Sciences
ENVS 1301
A
2021/9 Comparative Programming Languages
CS 4402
A Web Programming 1
CS 2205
A
2021/11 Web Programming 2
CS 3305
A Data Structures
CS 3303
A+
2022/1 Databases 2
CS 3306
A Data Mining and Machine Learning
CS 4407
A
2022/4 Operating Systems 2
CS 3307
A Analysis of Algorithms
CS 3304
A
2022/6 Calculus
MATH 1211
A+ Discrete Mathematics
MATH 1302
A+
2022/9 Communications and Networking
CS 2204
A Artificial Intelligence
CS 4408
A
2022/11 Information Retrieval
CS 3308
A+ Computer Graphics
CS 4406
A+

 

必修科目のレビューや、教養科目のレビューはいろいろなところで書かれているので、ここでは敢えて取る人が少なそうなCSの選択科目3つをレビューします。

  • 取った選択科目4つのうち、Analysis of Algorithmsは取る人が多そうなのと、日本語のレビューを他のブログで見たことあるので割愛。まあ基本的にAsymptotic analysisです。ひたすら。

 

CS3308 Information Retrieval

テキストマイニングの基礎みたいなことを習います。教科書はStanfordのIntroduction to Information Retrieval https://nlp.stanford.edu/IR-book/information-retrieval-book.html です。自然言語によるクエリの検索(単一キーワード、ワイルドカード等)に対してどのようにドキュメント情報を保存しておくかや、TF-IDFとかの話が順番に説明されます。最後の2回はWebクローラの話なんかもあります。

この科目の特色として、Programming Assignmentの配点が全体の30点を占めるにも関わらず、回数としては4回しか課されないために1回の配点が7.5点もあって死にそうになるというのがあります。しかもInstructionが曖昧な上に、RubricがInstructionとかみあっていないため、Peer assessmentで採点基準を初めて見て「聞いてねえよー」という事態が頻発します。また、この4回の課題は続き物(一つ目の課題の結果を使って二つ目の課題を作る等)であるのもユニークですが、課題間のバランスがかなりおかしく、1回目はほぼ与えられたスクリプトを動かすだけ、2回目はぶっちゃけ与えられたスクリプトをそのまま提出したり、逆に与えられたスクリプトをガン無視してコードを書いてもRubric的には失点しないという適当さなのですが、突然3回目でかなりの理解を要求してくる(コードを書く量は大したことないが)かと思えば、4回目でまた怪しいスクリプトをテンプレートとして提供される(雑な作りだが一応動くしそれだけでほぼRubricを満たす、しかしちゃんと細かい所を直そうとすると意外と手間)…という構成です。

唯一の救いは、担当の先生がかなり分かっている人で、理不尽な部分は全部あとからの点数修正で何とかしてくれてました。おかげで最終スコアは99.89点で、30科目の中で最高点でした(99点台はいくつかあるけど、四捨五入で100点になった科目はこれだけ)。あとたまたまですが、先生が日本(東京)在住の外国人の方でした。30科目取って、日本在住の先生はこの方だけでした。

個人的には全30科目で一番楽しかった科目ですし、さほど難しい感じもしませんでしたが、ElectiveですしPAの課題がひどいので、テキストマイニングに興味がない人はわざわざ取ろうとは思わないでしょう。

 

CS4406 Computer Graphics

Three.jsというJavascriptライブラリを使ってCGを描いていきます。教科書はいろいろ使ってましたが、基本的にはMITのMooC https://ocw.mit.edu/courses/6-837-computer-graphics-fall-2012/pages/lecture-notes/ をつまみ食いする感じです。Learning Journalがいわゆる学習記録に加え、ちょっとした課題への回答も要求してきます(これが意外と答えづらい質問だったりする)。

また、ほぼ毎週Programming Assignmentがあります(全6回)。Programming AssignmentのプラットフォームはRepl.itで、課題が出来たら公開設定にして取得したURLをMoodleから提出するという変わった提出方法でした(なのでRepl.itに行って適当な検索ワードで検索すると、提出済み課題がわらわら見つかります)。UoPeopleには珍しくカリキュラムがちゃんと改訂されているような感じを受けました(Web Programming 1/2などのカリキュラムの古さに対する悪評はすごいので)。

自分は17年くらい前、大学院修士のときに情報系の専攻のコンピュータ・グラフィックスの講義を(他専攻の講義だけど勝手に)取っていたのですが、基本的には同じことを教えているという感じがします。そのときはPOV-Rayを使ってましたが。

 

CS4408 Artificial Intelligence

AIとありますが、昨今の機械学習を読み替えたようなAIではなく、いわゆる知能がどうとか合理的なエージェントがどうとか、という本来のAIの話をしていきます。 教科書はArtificial Intelligence: Foundations of Computational Agents, 2nd Editionで、第1章から11章あたりをカバーしますが、大変難しいです。ただし、UoPeopleの課題(Graded QuizやDiscussion Assignment等)では、教科書の難しい所まで突っ込んでこないのが救いです。なので、テキストが難しくても絶望せずに、粛々とDiscussion AssignmentとかSelf-Quizを解いていけば単位は取れます。過去にならった探索アルゴリズムなども形を変えて出てくるので、その点は良い復習になりました。

  • ちなみに1000番台や2000番台の科目だと「この教科書だと分からないから他の分かりやすい教材で勉強しよう!」という方策が使えるけども、これとかCS4402とかInformation Retreivalとかは検索しても易しいものが出てこないときがあるので、教科書と真剣に格闘する気合が必要だと感じた。専門書を読むのと同じ感覚。

Programming assignmentは疑似コードを書かせるものが多く、実際に動くものを書けという課題は恐らくなかったはずです。すべて予めRubricが示されているので、それを満たすように素直に書けば問題はないはず。

  • 前回の3年間の振り返りエントリにも書いた、救急車で運ばれて入院した時に取っていた科目の一つ。手術直前までWeek7のPAをやっていたが、あらかじめ公開されているRubricが厳密なのと、あくまで疑似コードなので部分点を狙えてなんとかなった。

費用

UoPeopleに支払ったのは全部で3435ドルでした。ここには30科目分の費用のほかに、入学手続き費用60ドル、単位移行費用255ドル、卒業証書のRegistered mail費用120ドルが含まれています(卒業証書は普通郵便なら無料ですが、安全のためRegistered mailにしておきました)。自分は入学が2020年1月なので一科目100ドルで30科目で3000ドルでしたが、今は120ドルなのでもう少しかかると思われます。

あとは、期末試験(Final Exam)で試験監督を必要とするケースを有料サービスのProctorUで全部まかなったので、その費用がかかっています。合計で185ドルでした。

日本語のインターネットをうろうろした感じ、ProctorUの費用を挙げている人はあんまりいなそうなのでMy Ordersのスクショ置いておきます。値段の違いは試験時間の長さの違いですが、何分なのか具体的に書くと微妙に試験情報の漏洩になる気もするので書きません(また、問題がありそうなら上記のスクショは適宜取り下げます)。

また、Databases 2とOperating Systems 2は同じ科目で追加で5ドル課金されてますが、これはぎりぎりになって試験勉強が間に合わないと感じて試験をリスケジュールしたせいです(直前のスケジュール変更は追加料金を取られる)。金曜日にFinal Exam受けるとか無謀だった。

 

学習ツール・スケジュール

ツール

英作文はGrammarly一択です。一応、Ludwig.guruと、最後の方はQuillbotにも課金してましたが、基本的にはGrammarlyが全てです。GrammarlyのWordブラグインは動作が遅い時があるので、GrammarlyのWebサイトで直接書いて、必要に応じてあとでMoodle(UoPeopleの学習プラットフォーム)なりWordなりに貼りつけたときに整形していました。DeepLは急いでいて英訳が浮かばないときにちょっと使う程度でした。今ならDeepL WriteとChatGPTも使うと思いますが、Grammarlyの一番素晴らしいところはスペルが曖昧な単語を適当にタイプしてもすぐ見つけてくれる&本来書きたかった単語を”guess”する能力が非常に高いところなので、他のツールでは代替不可能だと思います。

Reading materialはPDF Expert(iPad用アプリ)およびWeava Highlighter(Chrome拡張)で線を引いて読んでいました。特に、PDFはiPadで読み込んで、Apple Pencilで線を引きながら読むようにしていたのですが、3年間の最後の方はReading materialにかけられる時間が少なすぎて、横着してPCでAcrobat使いながら線引いてるときも結構ありました。

  • 基本的に、テキストに線を引きながらゆっくり読めば大体覚えられる(普通に読んで大事なところに線を引くのではなく、じっくり読み込みながら色のついたマーカーで一文ずつなぞることで記憶できる)ので、まとめノートなどは一切作らなかった。
  • コースによってはReading materialとは別にVideo lectureなども提供されるが、映像を見るのが好きでないので一切見なかったし、それで支障なかった。

ちなみに、リファレンスはいつも手で整形してました。学割でEndNoteを買ったんですが、どんなに多くても10個に満たないリファレンスなら手で付けた方が速いので、いつもそうしてました。しかもある時からGrammarlyがAPAフォーマットを理解するようになったので、少しだけ楽になりました。

また、数式はGrammarlyの中でLaTeXでばばっと書いて、投稿する際にMoodle上なりWord上なりで整形してました。

  • 今はWordの数式エディタがLaTeXを理解するので、CalculusなんかのWritten Assignmentはその機能で乗り切った(手間ではあったけども、最初から全部TeXで書きたい程の分量ではなかった)。
  • あと、数学と言えば解答自動生成器ことWolframAlphaは絶対外せない。もともとは本業のために課金しているのだけど、College AlgebraやCalculusでは自力で解いた後の確認として役に立った。

1週間の学習スケジュール

大体どんな科目のどんな課題もこの時間に落ちる感じでした(たまにProgramming/Written Assignmentは+2時間くらいかけるときもありましたが)。逆に言うと、それ以上時間をかけられない、かけないとも言えます…。

  • UoPeopleの公式な1週間は木曜始まり水曜終わりだけども、時差があるので日本では木曜の14時5分に始まって木曜の13時55分に終わることに注意。
  • ちなみにUoPeople公式の推奨学習時間は1科目15-17時間。Academic Degree Requirements - uopeople catalogのCredit Hoursのところに説明がある。

 

【余裕があるときのスケジュール:1科目分】

  • Reading Materialを全部読む 2~3時間 土日のどちらか
  • Self-Quizを解く 10分 土日のどちらか
  • Discussion Assignmentをやる 2時間 土日、たまに月曜
  • Programming/Written Assignmentをやる 2~3時間 火曜・水曜
  • Peer Assessmentをやる DA/PAすべて込みで1時間 水曜
  • Learning Journalを書く 2時間 木曜

計 9時間~11時間

 

【余裕が無いときのスケジュール:1科目分】

  • Self-Quizの答えをReading materialやインターネットで探しながら解く 1時間 月曜たまに火曜、ごくまれに水曜夜
  • Discussion Assignmentをやる 2時間 水曜朝たまに木曜朝
  • Programming/Written Assignmentをやる 2時間 木曜朝
  • Peer Assessmentをやる DA/PAすべて込みで30分 木曜朝
  • Reading materialを流し読みしながらLearning Journalを組み立てる 1時間 金曜朝

計 6時間半

 

UoPeopleの大体の課題締切は日本時間の木曜の13時55分、Learning Journalだけ金曜の13時55分のため、余裕がない時の木曜朝の死にっぷりが尋常じゃありません。Written AssignmentやProgramming Assignmentがない時はかなり余裕がありますが…。また、Graded Quiz(中間試験)があるとこれに復習時間を含めた2時間が追加されます。つらい。

  • 一応公式としては、Discussion Assignmentは週の前半にForumに投稿して、後半はForumで他の学生の投稿のPeer Assessmentをしつつ、いろいろやり取りするのが推奨されているのだけど、全然守れず…(うるさく言ってくる教員も実はそんなにいないし…)。一応、罪滅ぼしのつもりで、水曜のぎりぎりに投稿してくるみなさん(大体有用なコメントを貰えない)を対象に、出来る限り長めかつ有意義なコメントを残したつもりなので、どうか許してください。

今後の展開

引き続きコンピュータサイエンスのオンライン修士課程に進もうと思っています。

  • 学部を出てとうとう情報系卒を名乗れるようになったものの、やはり知識が足りていない感じがするのと、もう少しじっくり情報工学の価値観を自分に馴染ませる必要がありそうなので。

とはいえ、UoPeopleに最近できた情報系の修士(MSIT)はコンピュータサイエンスというよりはややITより(Management等の単位も取る必要がある)ので、やはりここは鉄板のGeorgia TechのOMSCS(Online Master of Science in Computer Science)を第一志望にしたいところです。

  • 学費が安くて(ゆっくりやってもおそらく$70k程度で卒業できる)、TOEFLは要るけどGREが要らなくて、しかもカリキュラムが良いという噂。
    • カリキュラムについては、シラバスを見る限りオンキャンパスの科目と同等のものがオンライン用に編成されて提供されている模様。事前情報によれば一応修士研究に類するものも出来るようなので、その柔軟さも良い。
  • 一応、Georgia Techに蹴られたらUIUC辺りを考えたいけれど、学費が3倍なのがちょっと…。UIUCは推薦状が要らなそうなのが良いところなのですが。
    • カリキュラムを見るに、ちょっと簡単すぎる感じも少しする。特にData Scienceの方のコースとか。

とりあえず、先週小手調べに受けたTOEFL足切りライン越えてくれたようなので、3月15日締切のOMSCS出願に向けて準備します

  • R29 L30 S24 W25で108だった。4年前はR30 L28 S21 W23で102だったので、4年間でスピーキングが一番伸びたことに。UoPeopleにスピーキングは存在しないのに何故…?そして3年の間にあれだけ課題で書き物をしたのに、全然伸びてないライティング…。
    • スピーキングにせよライティングにせよ、もう少しちゃんと対策をすればもっと伸びるのだろうけど、前回も今回も練習するのが面倒くさくて事前準備ゼロでいきなり受けているので、こればかりは仕方ない。正直なところ、英語は特定の試験に向かって勉強するのが苦手でやれた試しがないので、TOEICTOEFL、英検等に向けて練習できる人は尊敬します。
  • 早速OMSCSの出願フォーム埋めてますが、学歴欄でUoPeople選ぶとNationally Accreditedなことの警告出ちゃうの世知辛いですね。分かっていても。

    • この「日本の非CS学士+UoPeopleのCS(+弱い実務経験)」の組み合わせが本当にOMSCSに対して機能するのか、Webでは情報を見つけられなかったので恐ろしいのだけど、とにかく頑張るしかない。
    • あとなんか、OMSCSは今期から出願形式変わった?っぽい?いわゆる推薦状や取得学位関連の書類などを除けば、自分が準備・アップロードすべきなのはCVだけで、Statement of Purposeとかもう無いっぽい(Redditでも話題にしている人がいた)。その代わりに、厳しい文字制限のあるすごく簡単なフォームをちょこちょこ埋めるだけになっていて、これはこれでやばい。この辺も後日まとめたい。
      • 「えっもうフォーム埋め終わったんですけど?これでCV上げて、成績証明書取って、推薦状お願いしたら終わりですか?ほんとに?」

【2023年4月24日午後11時追記】無事OMSCSに合格しました。詳細はまた別に記事を書きます。

 

configuration

恒例のような年末更新

つい数日前に更新しておいて、大晦日にまた更新するのはいささか頻度が高すぎる気がするのですが、年末に何かしらを記述するのはある程度恒例な気がしたので簡単に何かを書きます。

  • ここで更新しないとUoPeopleの事しか書かない人みたいになってしまう。別にそれで困るわけではないけれど。

今年自分の身に起こったことは実はひとつ前のUoPeople記事に書いた通りで、アフターコロナ来たので出張多すぎ&激しい腹痛により人生初の救急車呼び+運ばれ+緊急入院+療養+外科手術、で大体尽きています。

  • ちなみに病名は急性胆嚢炎(胆石性胆嚢炎)だそうです。胆嚢取られたけどどうやら別に取っていいやつだったらしい。何その適当臓器。
    • 手術後しばらく、持ちネタとして「内臓のコンフィグレーション変わった」なる台詞を気に入って使っていた。ちなみにコンフィグレーション変わってしばらくはお腹を下しやすい等々不具合があったけども、5週間くらいしたら大体元通りになったので人体はほんとに意味不明。純粋に胆嚢だけが悪かった(=取れば回復)のも運がよかったのだろうけど。
  • そして入院生活の非日常っぷりにめちゃくちゃ大興奮&エンジョイして、一部の人に渋い顔をされる。価値観の違い。
    • いやでもMRIがすごいちくわっぽいとか、それに比べたらCTは笛ラムネじゃないかとか、入院しなければ発見できない事実じゃないですか?それでもってMRIはすごい狭いうえに規則的な機械音がデカすぎるし、その中でテンポを保って呼吸せよとか、音ゲーみたいなことになってるし、こんなの楽しむしかないのでは?CTの造影剤はなんか面白いくらいあったかいし。
    • あと、救急車で運ばれると病院内の地理分からな過ぎて面白い。退院する段になって入院費を払いに会計に行きたいんだけど、そもそもフロアマップが全く分からないとか。

その一方で、この入院生活をほぼ独りでこなした(勤め先である研究室の教授と秘書さんには非常にお世話になったものの、結果として最初から最後まで親族家族は一切関わらなかった)事実も記しておこうと思います。

  • 家族親族が遠方で、かつ独りで住んでるとまあこうなるよね、という実例。職場の人だけが頼り。
    • まあそもそも一人っ子で、かつ片親決定になった時点(10歳)で「独りで生きてってやんぞ」という覚悟を決めていたので、これもまた想定の範囲内
  • ちなみに年末には毎年恒例で学部時代の同期と飲み会を開催している&今年もオンラインで開催したのだけど、自分以外の参加者は全員かなり実家と近いところに住んでいる and/or 助けになる兄弟姉妹がいる and/or 既婚で配偶者と同居しているので「お前ら恵まれてるな!」という態度をとっておきました。別に間違ってはない(適切だとも思わないけども)。
    • 今年の同期忘年会は、小さい子供のいる某メンバーが子供の話をし続けることで割と時が流れた感がある。まあ今現在自分の頭を占拠しているのがそれだから仕方がないといえばそれまでだけども、個人的にはやっぱりそれではなあ、という気もする。
  • 昔、20代前半の頃に結婚願望の強い人が「高熱が出たりするとこのまま死んじゃうのかもと思って心配になる、だから結婚して誰かと一緒に住みたい」と言っていたのを聞いて一つも共感しなかったのだけど、今回、脂汗が出るレベルの腹部の激痛と絶え間ない吐き気の中でUoPeopleの課題をやって、職場のオンライン業務をこなして、ちゃんとシャワーを浴びて身支度をして何とか自力で医者にかかろうとして、そこからどうにも動けなくなって自分でスマホで救急車を呼んだことを振り返ると、我ながら「ああこの人ほんとうに誰にも頼る気がないんだ、そりゃ結婚して助け合うとか理解できるわけないわ」と改めて自覚した。
    • 少し面白かったのは、最初の発症(内臓由来の痛み)のときは気弱になるどころか本気でキレていて「ああああ、くっそ、自分の体が思い通りにならない!!バカ!体のバカ!!」とすら思っていたのに、外科手術を受けた後の痛み(外傷由来の痛み)のときは痛すぎてめげていた点。
      • 入院直後、研究室の教授や親には「病気になって気弱になっているのでは」と言われたけども、全然そんなことはなく、なぜそんなことを言われるのか本気で謎だった。

あと15分で年も変わりますが、来年はUoPeopleを無事に卒業しつつ、入院しないのを目標にしたいところです。

  • ちなみに今回のタイトルは内臓のコンフィグレーション変わったところから。点滴を打たれていた時も思ったけども、人体あんまり開け閉めとか器具抜き差しするようにできてないのがこういうとき不便。


というわけで(ry

3 (years in UoPeople)

【2023年1月21日追記】

追加の卒業エントリを書きました。3年分の費用や取得単位などの話は追加エントリの方にあります→Graduation from UoPeople - Segmentation Fault

 

はじめに

この記事は社会人学生アドベントカレンダーの12月25日分です。アドベントカレンダーってよく見かけるし結構好きなので読むのですが、自分が参加するのは初めてです。いつもと違う趣旨の記事なので少々緊張しますが&目次とか入れてみましたが、本文はあくまでもいつもと同じスタイルで書いてみます。

  • どういうわけか箇条書きを補足として多用する謎のスタイル。そして地の文は敬体なのに、箇条書きの部分は常体で書く。いつからこうだったのか思い出せない…。
  • そもそも社会人という言葉に違和感を覚える(大学教員は社会人なのか問題)のだけど、勤め人くらいのイメージで多分自分も該当するだろうと思って書いてみる。

一応、米国の完全オンライン大学であるUniversity of People(UoPeople)のコンピュータサイエンスコースに2020年1月から通い始めて、順調にいけば卒業まであと2週間の所まで来たので、この記事ではこの3年間の振り返りをまとめてお送りしたいと思います。あくまで、学生としてどんな感じで科目を履修して課題をやっていたかみたいなところを中心に書いていきます。

  • 本当は卒業して卒業記事を書こうと思ったのだけど、学期が終わるのが1月中旬でアドベントカレンダーに間に合わない&どうせ一つの記事で振り返りとかすると長大になりすぎるので、習得単位や科目、学習スタイル、かかった費用などについてはまた後日→書きました Graduation from UoPeople - Segmentation Fault
  • 情報工学を修めてみてどうだった、2度学部を出てみてどうだった、みたいな話も詳細は次の記事に。大学教員としてはこういう、アカデミック方向からのポエムが一番書きたいのだが、書きだすとほんとにほんとに長いので次で。

書いているのはどういう人か

昨年40代に突入した理系の大学教員(准教授)です。現在の所属は情報工学系ですが、もともとは生物学を修めていて、学部の卒業研究から生物学と情報工学情報科学の間にあるバイオインフォマティクスという分野で研究しています。職歴的には、2010年に生命科学系で博士を取って、博士研究員(ポスドク)4年(生物系)→助教4年(情報系)→准教授4年(情報系)という遍歴です。

ちなみに学生時代の師匠は物理が専門で、働き始めたあとも情報工学が専門の上司はいなかった・いないので、UoPeopleに入るまで情報系の知識を先生について習ったことはなく、完全に独学でした。

ちなみに高校1年の時に唐突に思い立って文系から理系に転向したため、理系を博士まで出ていながら理数系(特に数学と物理)に極端に弱いという弱点があります。理系を25年やったけどほんとに才能がない。その分、英語は相対的に強いです。UoPeople入学時点で、TOEIC990点英検1級、TOEFL102点でした。

  • むしろ英語しか強くないので、困ったら英語でごまかしたいといつも思っていたり。でも英語も(上記のTOEFLスコアが示す通り)本当にできる人には遠く及ばないのですが。
  • なぜか計算機科学にはそこまで弱くないので何とか生き残っている状態。でもUoPeople通いにより、計算機科学でも数学っぽい所はやはり苦手であることを思い知った。あとプログラミングも嫌いではないけどそんなに得意ではない。

何で学部通ってるのか

前に大学通いを報告する記事でも書きましたが、情報系の大学教員なのに情報系の大学教育を受けていないことがハンデだからです。

研究するだけなら独学で必要なところだけ学べばいいのですが、学生を教育する(講義をするだけでなく研究指導をする)上で、学生が知識として何を知っていて何を知らないか、情報系としてどういう物の考え方をしているか、学部教育でどんな価値観がインストールされるのかを経験していないのは不利です。

ちなみにこれは全くの私見なので長くは語りませんが、大学院の研究指導においては時に、明確に言語化されない「背中で語る」部分が重要になったりします。ただ、それができるのは教員と学生の出身分野が同じだからではないかと感じることがそこそこあります。上に書いた通り、自分の先生は自分と専門が違ったので、たまに温度差を感じる事がありましたし。

  • ポスドクまでは生物とか物理とか化学とかの上司&学生と混ざって研究していたので問題にならなかったのが、助教で情報系に意図せず移って学生が全員情報系だったあたりから色々難しくなってきた感。ポスドクなら自分の研究だけしてればいいけど、助教だと教育の義務も発生するし。

何でUoPeopleなのか

UoPeopleを選んだ理由はいくつかあるので、これを機にちょっと並べてみます。

通学がないから。もともと修士の頃(20代半ば)から、40歳になったら大学に行き直したかったこともあって、放送大学も検討したことがあるのですが、当時(コロナ前)は試験を受けるためにセンターに行かないといけないっぽかったので断念しました。今はWebでも試験が受けられるようです。

英語だから。強みである英語力を維持する&あわよくば伸ばすために、もともと英語学習にそれなりに時間と労力をかけていたこともあり、大学通いでその時間が減ってしまうと英語が錆びてしまうので、使用言語が英語なのは自分にとってはプラスでした。また、現在の勤め先で過去教えていた・現在教えている内容(専門分野と微塵も関係なく履修もしたことない理工系科目なので、担当が決まってから一から勉強した)は英語の教科書で独習したこともあり、自分が英語で学部の理工系科目を学習できること、それにより英語力が伸びることがあらかじめわかっていたのもあります。

  • ちなみに担当科目を英語で勉強した理由は、あまりにも理数系が苦手過ぎて&内容が専門と本当にまったく関係なさ過ぎて、日本語の教科書だと拒否反応が出たから。英語の教科書だと「これは英語!自分はただ英語を勉強しているだけ!」って思いこめて大体何とかなる。強みに寄せるのは大事。

学費が安いから。当たり前ですが博士まで持っていて大学で教えている立場なので、今更学士を取っても金銭的には(少なくとも短期的・直接的には)何も得るものはありません。研究業績をあげたならまだしも、資格取ったら昇給とかないし。なので、(2022年は急速な円安でやばかったですが、それでもまだ普通に通うよりは)安く上がるというのは重要です。あと大学教員の給料はそんなに高くない。

卒業研究がないから。卒研指導を仕事としてやっている身としては、自分でちょこっと卒研とかそれに類する課題をやるくらいなら、普通に数年研究して修士とか博士とか欲しいです。それなら本業の研究業績にもなるし…。その点で、講義を受けて単位を取るだけで卒業できるのは魅力でした。

3年間の振り返り

ここから各年ごとの振り返りです。前置き通り、大学教員だからどうとかとか、アカデミックに見てどうだとか、専門がどうとかいうような話は書き始めると長いのでそんなに含んでいません。全体的に、コロナ禍でオンライン化したおかけで出張が減り時間が出来て助かった→アフターコロナが始まったので早期卒業目指す&とてもスケジュール的に厳しくなった、というような感じの流れです。

2020年

2020年の1月末から最初の学期(Term)が始まりました。この時はまだコロナは中国の一部で流行っているという程度で、2月には普通に国際学会に行って、移動中や会場でこっそりUoPeopleの課題をやったりしていました。

最初に入学者全員が履修するOnline Education Strategiesと、最初の専門科目であるProgramming Fundamentalを履修して、2科目で特に問題ないと感じたのと、履修計画的にも計算が簡単なので常に1Termに2科目で進むことにしました。2科目だと6単位なので、全120単位を取るには20Term(1年は5Termなので4年)かかる計算です。

  • 他のUoPeopleの社会人学生の方のブログなどを見ると、結構フレキシブルに休学したり3科目とったりと履修科目数を変えているみたいなのだけど、自分にはちょっと無理かなと。忙しくなるタイミングがあまり読めないのと、一度休学すると二度と戻って来れない気がしたので。

その後、3月末にはコロナ禍が本格的に始まり、ありとあらゆることがオンライン化して本業の大学(当然オンキャンパス前提)の方は大変な混乱に陥りました。しかし、幸いにも自分が担当する講義はおおむね後期開講で、前期は6月に大学院講義が数回ある程度だったので、自分への影響は最小限でした。むしろ会議が全部オンラインになり出張も無くなったので、環境的には自宅にいる時間が伸びたうえ、時間的にはむしろ余裕がありました(前期に講義を担当していた、同じ研究室の他の教員は本当に大変そうでした)。

もちろん先は読めないので不安はありましたし、研究室の運営は今まで通りにはいかないので非常に大変でしたが、もともと情報系で大して大学に来ない学生も多い(それでも普通に研究できている)研究室だったのと、たまたま優秀なポスドク&博士学生のペアが在籍していて強力にサポートしてくれたのでなんとかなりました。

本業の大学とは対照的に、UoPeopleは元々完全オンラインだったので何も変わりませんでした。さすが。むしろ、UoPeopleのSelf-Quizの仕組みや、Dicussion AssignmentやLearning Journalの設問は、自分の本業でオンライン講義をやる上で大いに参考になりました。4択の設問、成績に入らないような小テストでも十分学生の理解度を試すことが出来る、英文の250 wordsで大体どのくらいのことが書ける、Learning JournalでReflectiveなあれこれを書かせることで得られる教育効果など、オンライン大学の学生として身をもって体験したことを教員として適切に実施できたので、UoPeopleやってて本当に良かったと一番最初に思った出来事でした。

  • このころは「大学教員は全員UoPeople経験すると良いのに」と思っていた気が。学生相手に反応見ながら色々試すのもいいけど、実際に習う側になるのは割と手っ取り早いと思う。

2020年8月頃にはこんなブックマーク&記事を書いてました。

働きながら大学に行く意味

専攻によるけど30過ぎならまだ大丈夫。必要なら修士も行って年齢不問の所へ/自分は来年40歳の大学准教授だけど今年初めに学部に入り直して2つ目の専門を身に着けつつあるよ。うるさい外野は無視して一緒に頑張ろう。

2020/08/11 12:32

b.hatena.ne.jp

mbr.hatenadiary.jp

このころの目下の悩みは「本当に続けられるのか」「博士まで出て大学で教員をやっているのにまた学部に行くなんて、おかしなことをしているのではないか」という感じでした。

  • でも自分がやっていることが間違ってるとは思わない、ので精神的に苦しい。
  • 上の記事で取り上げたブックマークコメントは書き手への励ましであるとともに、自分自身を鼓舞している・自分自身の退路を断とうとした部分もある。特に「一緒に頑張ろう」の部分は、このあと何度も思い出しては自分を励ますのに使われた。

当時の科目の感想としては、まだあまり慣れていない中で教養科目のDiscussion assignmentやWritten assignmentが難しいときがあってつらかったです。まあ、入学して3Term目でIntroduction to Philosophy(哲学入門)とか取るのがいけないんですけど。2週目か3週目で形而上学とか出てきて、さすがに英語では無理かもと思ったりしてました。無理やり乗り越えましたが。

  • 形而上学の週のDiscussion assignmentでは、異なる次元への憧憬という観点から日本の異世界転生ネタを取り上げたはず。そしたらIsekaiジャンル好きに食いつかれて、そこで初めて海外ではIsekaiと呼ばれていることに気づいた(調べたらWikipediaまであった)

専門科目はProgramming 1のJavaが厳しかった思い出があります。Javaは20年くらい前に独学しようとして挫折した(コンパイラ言語が全般的に苦手)ことがあるので、このUoPeopleの履修でなんとか挫折を乗り越えた格好です。

また、UoPeopleの1Termは1週ごとに課題が出てそれを8週間こなしていく(全部で約70点分)+9週目に期末試験(約30点分)があるという構成なのですが、その課題締切が日本時間だと木曜の14時(Learning Journalと呼ばれる課題だけは金曜の14時)なので、ここから3年間は基本的に毎週水曜の夜から木曜朝、そして金曜の朝は課題で死んでいる状態になっていました。

  • 大学教員は裁量労働制なので木曜の朝に課題をやってても勤務上問題はないものの、まあやっぱりできれば9時ー18時くらいはできるかぎり本業の方に対応したいよね、とか。そもそも事務からのメールがその時間に来るし、会議も入るし。研究室の学生は基本的に夜型なのでむしろ12時ー21時とかで対応すればよいのだけど…。
  • ちなみに、本業での自分の担当科目は後期の木曜と金曜に集中しているため、本業の講義の準備によって後期になると死が加速する状態に。たぶんこの無理が2022年辺りに来たのではないか。

2021年

この年は6月に途中経過の記事を書いていました。

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やはりまだ内面の声と戦っている感じです。特にこの頃は、徐々にUoPeopleの科目の負荷が増えていているなかで、本業が遅々として進まなかった(研究業績が振るわなかった)こともあり、自分のやっていることが本当に正しいのか、その記事に書いた通り「なんで自分こんなことやってるんだろうか、馬鹿じゃないのか、学部に通ってる時間で研究して本業で業績出せよ」という思考にあらがうのが大変でした。

また、この時はまだ1度目の大学からの単位移行はせず、120単位をUoPeopleで取得して4年で卒業するつもりだったのですが、7月くらいから本格的にワクチンが出回り始めたのとアフターコロナの話題が出てきたため、唐突に「もしかしてもうすぐコロナ禍が終わるのではないか」「また出張などが増えるのではないか」と気づき、履修計画を真面目に練りなおすことにしました。

特に、期末試験(Final Exam)のときに試験監督および静穏な環境を必要とする試験の科目(Proctored courses)は、仮にオンラインの試験監督サービス(ProctorU)を使っても試験の場所を選ぶため、どこでも受けられるというわけではないのもポイントでした。適した場所を確保するため、突発的な出張などが発生しないコロナ禍の間に取ってしまえると良いのですが、ここで一つ厄介なことが発生します。UoPeopleの履修登録は総単位数で順番が決められており、単位数が少ないと履修登録が後回しになります(厳密には総単位数で学年が決まり、学年が上の順に履修登録が可能になる感じです)。そのため、自分の番が来た時にはすでに科目の枠が埋まっているということがあり、上の学年のProctoredの科目を思ったように取れない事態が起こり得ます。

  • あとは単純に、コロナ禍後に本業が忙しくなりすぎてUoPeopleを続けられない可能性もあるように思ったり。基本的に職位が上がれば上がるほど、そしてその職位についている時間が長ければ長いほど、学内のより厄介な仕事が回ってくる可能性が高まるため。

そういうわけで、自分は教養科目も好きなので120単位取るのは構わなかったのですが、単位移行で総単位数を増やして履修登録を有利にしつつ、早めに卒業することを考え始めました。すでに取った単位を含めて色々計算した結果、30単位(教養科目に9単位充当+選択科目に21単位充当)を出身大学から移し、必修科目とは別に選択科目を3科目9単位ほど取ることでUoPeopleで90単位を揃え、合計120単位にすることにしました。1Term2科目6単位ペースなので、90単位取るのには3年かかります。ここで4年計画が3年に変更されました。

  • そのため、2021年6月のTermまでは専門科目1科目+教養1科目という体制で履修してきたものを、9月から専門2科目に切り替えた。箸休め的科目がなくなったので苦しくなった上、専門科目が徐々に難しくなってきて、徐々に履修が辛くなってきた時期。

実際に単位移行をしたのは12月末で、その時の詳細はこっちの記事にあります。

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また、実際に履修していた時の感覚としては、このころから徐々に英語を書く速度が速くなっていって、Learning Journalなら標準的な最低文字数である400 wordsを1時間以内で書けるようになっていきます(その後、30分くらいまで短縮可能になりました)。それでもまだまだ遅いんですが、いろいろやった課題や教科書を見ながら文字通り振り返りを書いているので、これ以上は速くならない印象です。

  • Discussion assignmentは調べものがあるので、最低文字数の250 wordsでも2時間くらいかかる。Programming assignmentやWritten assignmentなどは物によるが、大体4~5時間見ておけばどんなに難しい課題も概ね終えられる印象(実際は2~3時間で終わることも多い)。

履修していた科目の内容としては、徐々に教科書を熟読する必要がある科目が増えてきた感じでした。履修計画を変えて専門科目が増やしたのと、学年があがって科目そのものの専門性が上がってきたので当然なのですが、適当にWebで検索しても出てこないような概念が説明されたり、日本語の訳がないような用語があったりして、教科書や与えられたReading materialを読んでちゃんと理解できないと課題がこなせないことがありました。

  • この年の後半は、2020年に出てきた研究室の優秀ペアの二人を主な話し相手として有効活用していたように思う。1年目は自分で何とかなっていたものが、2年目で専門科目になったので先輩方の力を借りるようになった格好。特にComparative programming languagesでは、他大学で情報系の学位を取ったポスドクPrologを知っていて、うちの大学の学生は知らなかったりと、カリキュラムの違いを感じたりもした。
  • 総じて、情報系出身の学生・ポスドクはやっぱり情報系だなあ!と思うこと然り。1年目は基本的な事だったので自分も知っていることが多かったのだけど、2年目になって自分が教科書を読み課題をやって初めて知ったことを口にすると、ちゃんと知っていて「ああ、あれね」と返してくるのが本当にすごかった。具体的にはPartial applicationとか。

2022年

今年です。昨年の予想通り、3月くらいからアフターコロナで出張が増え始め、UoPeople抜きにしても全体的にスケジュールが破綻していきます。去年のうちに試験監督ありの専門科目を集中的に取りはじめておいて良かったと思いました。

  • 最後のProctored examは6月初めで、このあと本格的に出張ラッシュが始まったのでぎりぎりセーフだった。
  • 結局この年は国内出張10回、海外出張10日間x2回だった。7月から9月は家にいない時間の方が長かったような気すらする。

スケジュールが厳しくなっていくと、だんだん出張に伴う移動が早朝や夜(勤務時間外・大体UoPeopleの課題をやっている時間)に押しやられていくこともあり、この年は移動の新幹線の車内や宿泊先のホテルでUoPeopleの課題をやるのが常態化していました。

  • 下手をするとホテルをチェックアウトした後、ロビーで課題をちょっと片付けるという状態に。へんなところに居座ってごめんなさい…でも課題には安定したインターネット環境と机と椅子が必要なんです…。
  • スケジュールの都合上、8月中旬ごろには出張先のアメリカのホテルで期末試験2科目分を受ける羽目に(ただし試験監督無しの試験)。時差がいつもと違うのと、ホテルのインターネット環境が非常に不安だったが何とかなった。

また、10月中旬にこれまでの無理がたたったのか自分で救急車を呼んで入院しました(家族と離れて単身で暮らしているため、自分で呼ぶしかなかったのです…)。急性胆嚢炎とのことで、激しい腹痛と吐き気を伴う病気でした。

  • 症状が出たのが金曜日の早朝だったので、午前中に入っていた(自分がいなくても良い)ミーティングをキャンセルし、Learning Journal2科目分を文字通り激痛の中で歯を食いしばりながら仕上げて提出。文字数を稼ぐために腹痛の言い訳もちょっと書いた。その後、オンラインで予定されていた本業の業務をちょっとやって、それから救急車を呼んだ。
    • 怒られるのを覚悟で言うと、Learning Journalとオンライン業務のために無理をして救急車を呼ぶのが遅れたのは事実。オンライン業務の方は30分だけだったし、すぐに代わってもらえそうな人がいなかったのもあるけど…。
  • その時取っていた科目の片方がCommunications and Networkingで、この科目のLearning Journalは珍しく書く分量が非常に少なくて済むのも救いだった。たぶん50とか100ワードくらい(500ではない)。

その後、しばらく入院療養して症状が緩和する&退院を待ちつつ、いつも出張で使っているノートPCを研究室の秘書さんに持ってきてもらって、ぼちぼちUoPeopleの課題を病室からこなしていた(体調が万全でないので捗らないが、なんとか水曜の夜までにある程度その週の課題を終わらせていた)のですが、その次の木曜日の朝に症状が再発して急に手術することになりました。

  • 手術の実施に伴い、あれこれ説明を受けたり診察を受けたり職場に連絡したり遠方の家族に連絡したり。ただ、痛み止めを打たれればとりあえず活動できるので、いろいろなことが片付いた昼12時ごろから、手術の順番を待ってる間に終わっていない課題をなんとか頑張り始める。諦めの悪さは重要。
  • 結局、締切の時間ギリギリまでArtificial Intelligenceという科目のProgramming assignmentをやっていたら、急に手術室に呼ばれたのがハイライト。「えっ、順番待ちで3時か4時って言ってたのに…まだ1時45分…締切まであと10分あるのに…マルコフ過程ちゃんと実装できてない…」。
  • 来てくれた看護婦さんに「あっすみませんちょっと待ってもらえませんか」とか言って慌てて課題をサブミットし、おもむろに手術着に着替えさせてもらう。人生初の手術だったけども、頭の中は直前までやっていたProgramming assignmentの事でいっぱい。

その後手術を受けて「金曜14時締切のLearning Journalは出せるかな、どうかな…まあLearning Journalそんなに配点高くないし、最悪、1回くらい出せなくても…」と思ってたら、普通に金曜の朝方には各種機器を取り外し、昼には普通にご飯を食べていたので、普通にLearning Journalを2科目分書きました。その前の週に激痛の中で書いていたのに比べたら、手術後の痛みはあっても痛み止めを貰えている分、楽勝でした。

  • この間、本業の方は(メール返信などはせっせとやっていたし、オンラインの会議やセミナーにも普通に出てはいたけども)いろいろ待ってもらっていたことも多かったので、「学生として課題をこなす方が、教員として仕事をこなすより時間的に融通が効かずつらい」という事実を目の当たりにした。まあ講義とか教員の都合で休講に出来るし。自分は講義形態の関係で結局休講にはしなかったけども…。

またこの一件から、オンライン大学は入院しても続けられるという素晴らしい知見を得ました(当然病気によりますが…あと入院環境…)。

また、精神的な面としては、この年の5月か6月頃になって、専門科目を重点的に取ってきたせいなのか、3年目になったからなのか、これまで学んだことが唐突に実を結び始めます。具体的に知識がどうというよりも、情報系としての考え方がはっきり身についてきた感じでした。

  • おかげでこの年の前期の大学院講義は情報系のカラーを強めることができた(情報系の学生に伝わる物の言い方ができた)し、本業の研究活動や卒研指導でもかなり情報系としての物の見方が出来るようになって、出来ることが広がった。まだ実際の研究として結実するところまでは行っていないのが残念だけども、おそらく来年か再来年にはちゃんと情報系として論文を出せるのではないかと期待している(し、正直その瞬間をすごく楽しみにしている)
  • これに関連して、確か7月~9月頃、やはり唐突に「Computer Scienceを修めないで死ねるものか」という感覚に襲われた。この感覚は博士課程の時に博士取得に対して感じたものに近く、この感覚が来た時に「勝った、これで(=この感覚があれば)卒業できる」という思いが湧いた。10月に入院しても気力でカバーできたのにはこの感覚があったのも大きい。
  • なので、今年はいわゆる内面の声に悩まされることはなかった。出張や入院など物理的なスケジュールが厳しい中で、精神的にははっきりと自信を持てて楽だったのは救いだった。

まとめ

というわけで3年間をざっくりと振り返りましたが、基本的に学年が上がると内容が難しくなる&ネットで手に入る資料が減ってくるのでつらい、という印象です。その一方で、予備知識がある専門科目に当たるとめちゃくちゃ簡単だったりして、自分の知識のムラを思い知らされます。

  • 今取っているInformation RetrievalとかComputer Graphicsとか、半分くらい知っている内容なのでいきなりSelf-Quizとかやっても意外といけたりする。

また、2022年のあれこれにあるように、やっぱり不測の事態が起こると毎週課題があるUoPeopleは厳しいです。自分は気合と根性と現代医学の力で乗り切りましたが、どうにもならない場合もあると思います。ただUoPeopleの場合、一つの学期を構成する9週のうち最初の4週目までならWithdrawという手が使えるので、うまく活用するのがよいのかもしれません。

  • でも自分の場合、入院したのが確か7週目の始めだったので、やはり最後は気合と根性に頼る羽目に…。

何はともあれ、今のTermがまだあと2週間(厳密には2週分の課題+期末試験)あるので、3年間の学生生活がここできちんと締めくくれるよう、頑張ります。

Transfer Credits (to UoPeople)

UoPeople途中で単位移行してみた

 普段はあまり役に立つことを書くようなブログではないのですが、先程、2年ほど前から通っているオンライン大学UoPeopleにかつて通っていた日本の大学の単位を移すということをやってみたので、情報として放流してみます。
 最近増えてきた、日本の大学の単位をUoPeopleに移すブログ記事と大きく違う点は

  • 一般教養科目も含め、すでに60単位ほど*1取り終えてから単位移行を実施した
  • 学部を卒業したのが18年前(コース番号とかついてないし、当時の科目シラバスなんて紙媒体のみで当然消失している)

辺りかと思います。

 特に、多くの人が入学直後に単位移行をした結果を記しているので、自分の「途中まで普通に履修してから単位移行するとどうなる」な例は意外と少ないんではないかと思います。
 そんなわけで以下、他のブログで明記されない&実際にやってみて気づいた点を列挙しておきます(単位移行のやり方については詳しい記事が他にたくさんある*2ので、ここでは細かい手続きは省いて気になった点だけ記載します)。

  • 事前情報通り、成績評価機関としてはUcredoが恐ろしく速い上に安い(1通$180)。成績証明書のデザインにもよるらしいが、基本的には自分でスキャンした成績証明書PDFをアップロードすれば良いだけ。自分の場合は12月27日夜に手続きして、1月1日の午前4時ごろに結果のメールが来た。アメリカに年末休みが無くて良かった。
    • UoPeople側の評価も非常に早い。Ucredoの評価PDFをアップロードして2日で(1月3日に)単位移行の準備が出来たとの連絡が来た。UoPeopleに正月は存在しない(科目を履修している学生なら誰でも知っている事実)。
  • 本来の単位数から変更されることがある。評価機関(Ucredo)側でも、UoPeople側でも。
    • Ucredo側の変更:自分の場合、大学の講義を受けるのが楽しくて仕方がなく教養の文系科目や他学科の専門科目を色々履修していたこともあり、卒業までに156単位取っている。これが総単位数が120単位強になるようにスケールされた模様。非常に腹立たしい。
      • 例:卒業研究8単位が6単位になっている。下のリストの中では、実験系科目(生命科学総合実験第一)は4単位が2単位。生命科学L1ゼミが2から1単位、経済学の基礎理論が3から2単位になっているのもUcredo側の変更。 苦労して取った他学科の専門科目の単位を勝手に減らされるのも困るが、とりあえずLaboratory(実験)ってついてたら単位を半分にするのも止めて頂きたい。そもそもL1ゼミは座学なのに…(これは大学の英語科目名の付け方が悪いが…)。
      • Ucredoの書類に単位数変更の旨が明記されている。

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    • UoPeople側の変更:自分の大学は座学のほとんどが2単位なのだが、UoPeopleでは1科目3単位となっている。そのため、3単位の枠に収まるよう、本来2単位の科目が適当に1単位に変更されて押し込まれたりする
      • 例:人文系科目(Humanities)には、歴史学第一(History I、2単位)とドイツ語中級(German III、2単位)が当てられたが、合計で3単位になるようドイツ語の方が1単位に変更されている。下の表では人格心理学、分子生物学第二の1単位も同様。
  • 基本的に卒業要件を満たすよう、残りの単位にあわせて詰め込まれる。なのですでに取っているところには当てられない。
    • 線形代数学(Linear Algebra)の単位を2科目4単位持っているのだけども、College Algeblaを持っているせいか全然単位移行の対象にならなかった。また、生化学(Biochemistry)も2科目4単位くらいあるのだが、Introduction to Environmental Sciencesを持っていたせいか、やはり全く対象にならなかった。
    • ちなみに、UoPeopleの担当者(Program Advisor)に詳細を要求すると、こんな感じでどのカテゴリに何単位分充当したのか情報を貰える。逆に自分で情報を聞き出さないと何の単位がどこに行くのか分からないので注意。

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  • 60点の単位(Ucredo側でC判定)も普通に単位移行の対象となる。
    • 自分の大学は点数制&60点が単位取得最低ラインで、成績証明書には落とした単位が記載されない。そしてUcredoの変換スケールは60点台がC、70点台がB、80点以上がAだった。つまりDもFも存在しない成績表になる。単位移行では点数は関係ない(移せるのは単位数のみで成績は関係ない)が、大学院に出願する時にこれだとGPA爆上がりなんだが大丈夫なのだろうか?
  • UoPeople側での移行可能科目の選び方は不明。1年次より2年次の科目が重点的に選ばれた感じがするが、理由不明。
    • 一応、専門科目っぽいものを選び出している感じがする。でも図学(Descriptive Geometry I)とかも普通に対象となっていて不明。
    • 良くわからない名前の科目より、中身が想像できる科目が選ばれやすい?
    • 明らかに同じ名前の科目が選ばれにくいようになっている。たとえば生物学第一(Biology I)と生物学第二(Biology II)を取っていても出てくるのが第一だけだったり、心理学(Psycology)と人格心理学(Personality Psycology)を持っていても後者だけとか。
    • そのくせ何故か分子生物学第二が2つに分裂している(下のリスト参照)。似たような名前の科目として、分子生物学第一、分子生物学第二、分子生物学(何もついてない)を取っているので、UoPeople側がなんかミスしたのでは?という気がする。
      • 実際には1単位の方だけを単位移行に使ったのでズルはしてません。
  • (追記)移した単位は1日程度で完全に反映される模様。移行手続きをして料金支払いをした時点でUnofficial Academic Report(科目と成績リスト)には即時反映されるが、卒業条件判定ツール(Degree Audit Report)や、ポータルサイトのログイン直後に表示される総単位数などに反映されたのは約20時間後だった。

 ちなみに、移行可能な単位リストとして提示されたのは21科目42単位でしたが、これはすでにUoPeopleで人文科学(Humanities)・社会科学(Social & Behavioral Sciences)・理工系(Natural Sciences & Technology)の科目をそれぞれ1科目ずつ計9単位分、さらに基礎科目(Foundational Requirements)にあるCollege Algebra3単位もとってしまっている状態での単位移行だったからで、この辺を取ってなければ+12単位されて54単位くらい移せたかもしれません。

  • 上記の「同じ名前っぽい科目は出来る限り2度使わない」が発動すると人文・社会系はフルに足りたかちょっと怪しいけど、少なくとも理工系3単位は間違いなく充当されたはず。
  • UoPeopleでの他の教養必修科目(EthicsやCivilization StudiesやStatistics)は該当する科目を持っていないので無理だった気がする(ちなみにどれも単位取得済み)
  • ちなみに全部移すのではなく、30単位分だけ選んで移した。
    • 必修以外にも取りたい科目がいくつかあって、それをElectiveに充当する予定なので33単位全部を埋める必要がないため。
    • なので、何にも考えずに全部移す、というのは実は賢くない。ただ、移行には1科目につき$17しかかからないので、無駄になるお金はわずかではあるけど。

 ついでなので、移行された科目&単位数リストも載せておきます。最初の3カラムがUoPeople側から提供された情報で、日本語名と本来の単位数を足してみました。

  • 個人的には、教養科目の社会学基礎がElectiveに行っているのに、社会工学科の専門科目(経済システムと政策論)が微妙に文系科目に充当されているのがなんだかねえ、という感じ。自分の大学の英文成績表にはどれが専門科目でどれが教養科目なのかが記載されないので、科目名から判断する以上は仕方がないのだけども。
  • あと、なんでか微分積分学第一(Calculus I)がCS専門科目のCalculusにカウントされなかった、ので移行しなかった。内容のレベルとしては日本の大学の方が上なんですけどねえ…。
Course approved as (UoPeople) Courses approved Credits 日本語名 本来の単位数
External Transfer Different Discipline 1 Organic Chemistry II 2 有機化学(生命科)第二 2
External Transfer Different Discipline 2 Molecular Biology II 1 分子生物学第二 2
External transfer elective 1 Graduation Thesis 6 卒業研究 8
External transfer elective 10 Physical Chemistry II 2 物理化学(生命科)第二 2
External transfer elective 11 Molecular Biology II 2 分子生物学第二 2
External transfer elective 12 Fundamentals of Bioinformatic Engineering 2 生物情報工学基礎 2
External transfer elective 13 Advanced Life Science Laboratory I 2 生命科学総合実験第一 4
External transfer elective 14 Macromolecules 2 生体高分子学 2
External transfer elective 15 Laboratory Seminar I on Biological Information 1 生命科学L1ゼミ 2
External transfer elective 2 Foundation of Sociology 2 社会学基礎 2
External transfer elective 3 Calculus I 2 微分積分学第一 2
External transfer elective 4 Basic Biology A 2 基礎生物学A 2
External transfer elective 5 Descriptive Geometry I 2 図学第一 2
External transfer elective 6 Basic Biology B 2 基礎生物学B 2
External transfer elective 7 History of Architecture I 2 建築史第一 2
External transfer elective 8 Basic Theory of Economics 2 経済学の基礎理論 3
External transfer elective 9 Biology I 2 生物学第一 2
External transfer humanities 1 History I 2 歴史学第一 2
External transfer humanities 2 German III 1 ドイツ語中級 2
External transfer Social * Behavioral Sciences 1 Economic System and Politics 2 経済システムと政策論 2
External transfer Social * Behavioral Sciences 2 Personality Psychology 1 人格心理学 2

追記:
無事に移行した科目がDegree Audit Reportに反映されたので、部分的にスクショを載せてみます。UoPeopleと混ぜて取ってると大体こんな感じになります。

  • 昔過ぎて科目にコース番号がついてない時代の人なのでN/Aになっている。
  • 移した科目は成績部分がTCとなってGPAには反映されない。少しでも低評価を取る可能性を減らすために単位移行をするという考え方もありそう。

f:id:mbr:20220110161307p:plain

ちなみにウェブで出力できる非公式な科目と成績リスト上では移行元の大学名が載ります。正式な成績表でも載るのかは不明。

  • 最初の2行はUoPeopleの入学直後の見習い期間(Non-Degree Seeking Student)時代の科目。
  • 他大学からの移行科目はTermがUndefined nullなのがちょっと気になる。せめて取得年くらい移してもいいのでは。

f:id:mbr:20220110161701p:plain

以上、UoPeopleへ単位移行を考えている方の参考になれば幸いです。


というわけで(ry

*1:持っているのは54単位だけど、昨日今日で2科目分のFinal Examを終えたのでこれで60単位になるはず

*2:一番有名どころはサクライパンダさんの 【保存版】UoPeopleに編入後の単位移行の手順・費用・交渉の仕方 | サクライパンダのブログ だけども、他にも犬野ぷうさんの 単位移行(Transfer Credit)#UoPeopleネタ : 犬野のブログ も参考になる。Ucredoを知ったのもここ。理系の人の詳細な移行記録・科目リストとしては平八郎さんの 【単位移行】University of the People③|平八郎|note があって、自分はこれを見て単位の対応付けの様子をつかんだ(ただし成績についての記述は正確ではない)。ちなみに、点数制の大学から単位を移行した場合の例&いつ単位移行の結果が出るのかはみなみさんの 【51単位GET!】Transfer Credit 手続き|UoPeople情報 | Buenos Life | 南米アルゼンチンの情報発信ブログ に情報があった(ただし単位数についての情報は正確ではない)