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Accepted to OMSCS at Georgia Tech (via UoPeople CS)

UoPeopleのコンピュータサイエンス学士を経由してGeorgia Techのオンライン修士課程OMSCSに合格した

タイトルに嘘偽りはありませんが、簡潔すぎて大いに誤解を招くのできちんと説明すると、

「バイオ系の博士卒なのですが、30代前半で大学の助教になったときにうっかり情報系に来てしまって以来、バックグラウンド(専門)の違いで大いに苦労しているので、40歳目前で米国オンライン大学のUniversity of the People(UoPeople)に入って3年かけてコンピュータサイエンス(CS)を修め、それを足場にようやくこの春、ジョージア工科大学(Georgia Tech)にあるコンピュータサイエンスのオンライン修士課程ことOMSCSに入れてもらえることになりました」

が正しいです。期待していた方たいへん申し訳ありません。

  • UoPeopleはまだNationally Accreditedなので、UoPeopleの学士だけではOMSCSの出願要件を満たしません。自分の場合は日本の非CS学士(バイオ系)との合わせ技です。
    • 早くRegionalに格上げされてほしい。そうしたらUoPeople→OMSCSの格安CS修士パスが完成するのに。

正直なところ、ここに至る経歴が変過ぎて自分の例を出しても誰の参考にもならないとは思いますが、OMSCSのFall2023 admissionがどんな感じだったか、UoPeopleからOMSCS(やその他大学院)を目指す時にはどんなことがあるのか、という点で自分の出願エピソードとタイムラインを情報として投下しておきます。

  • 一応補足として、OMSCSは「大学院で最低限やって行けるだけのCS知識を持っている事」が入学の条件なので、基本的にはRegionally Accreditedな大学のCS学士&良いGPAを持っているのが好ましく、そうでない場合はケースバイケース(=職歴だの資格だの、卒業には至らないけれども大学で取った単位だのを寄せ集めた情報)で判断されるよう。
  • 自分の情報系の職歴としては、大学の情報系の学科で助教&准教授あわせて8年半ということになるのだけども、Reddit等を見ているとOMSCSは時に実務経験よりも取得科目を重視することがあるようで、そういう意味ではUoPeopleがフォーマルなCS教育の全てで、MOOC等は一切取っていない。また、現在の職である大学の教員はあくまで学生を指導するのであって自分で手を動かすわけではない(そして自分で手を動かす場合は必要最低限のRuby or Rスクリプトしか書けない)ので、大学院に入るに値するような実務経験かと言われると非常に疑問。その一方で、CSの基礎知識は大部分をUoPeopleから得ている。
    • というわけで果たして自分が情報系の教員をそこそこやっているという職歴で加点されたのか、UoPeopleのCS学士が効いたのかわかりませんが、とにかく「こいつ大丈夫じゃね?」と思ってもらえたようで合格できました。

前振りが長くなりましたが以下目次。

出願に必要だったあれこれ

TOEFL(ひょっとしてUoPeople卒なら不要だった?)

当然必要なのだろうと思って受けました。30代の頃にかなり集中して英語学習に取り組んだ(一日2~3時間を1.5年+1年くらい)のと、UoPeopleで英語に慣れているので、特に準備せず受けて108点と問題ないスコアが出ました。

ところが出願が終わって良く見てみると、不思議なことに提出済み書類欄のなかのEnglish Proficiency satisfied by TOEFL の下に、 English Proficiency satisfied by academic history なる文言があることに気づきました。

日付から推察するに、この日は応募フォームを記入していて、そこでUoPeopleの卒業日を入れたのではないかと思います。一度目の大学(学士・修士・博士)は日本の大学なので、他にacademic historyで免除になる要素はないはずです。

一応、Georgia Techのウェブサイトによると、Regionally Accreditedの大学に1年フルタイムで通った場合、英語試験が免除になるとはあるのですが…UoPeopleはNationally Accreditedですし、完全オンラインでフルタイムという概念があるのか不明な大学ですし、よくわかりません。

もう応募してしまった後でしたし、TOEFLの点も出してしまった後だったので深追いはしませんでしたが、もしUoPeopleを卒業後にGeorgia Techに行く場合はこの免除が適用になるのか、念のため確認してもいいかもしれません。自分のように先に英語をやり込んである場合は別ですが、出願準備の一環としてTOEFLに取り組む場合、90点やら100点やらはかなり大変なはずなので、これが免除になるのは大きいです。

  • この点からもぜひUoPeopleにはRegional accreditionを取ってほしい…。

履歴書

昔、アメリカに博士研究員として渡った際に簡単な英文の履歴書を生成して以来、それをちまちまと更新していたので、それを使いまわしました。体裁とかきれいなほうがいいのかもしれませんが、最低限の要素をおさえていて、見やすければなんでもいいとは思います(自分のは他人の見よう見まねで作ったものなので、デザインはほんとにしょぼいです)。

OMSCSは確か志願者数が1回につき3000~4000人という規模だと聞いていたので、長いCVは読まれないだろうと思って出来る限り短く収めることに注力しました。

  • 全4ページ。1ページ目には学歴・職歴に加えて、これまでの担当講義科目(=スキルセットの列挙の代わり)、2ページ目に指導した学生のテーマ列挙(=これまでに関わったCS系プロジェクトの一覧みたいな気分で)、3ページ目に論文リスト(=一応大学院という研究機関への応募なので、CSっぽくない論文ばかりでもリストはあった方が良いかと思って付けた)、4ページ目に獲得した研究費や賞など(=これも分野違いでもないよりはましかと思って付けた)。
    • 普段は、学歴→職歴→論文リスト→研究費&賞(→査読歴)→担当科目等々、のような感じで論文と研究費を先に並べるのだけども、今回はCS力をアピールするために担当講義や学生のテーマ一覧を新しく設けて先に列挙した。
  • ちなみに、どこかの注意書きに「GPAが出ない大学は履歴書にそれに類する数字を書いておけ」とあったので、日本の大学の分は頑張って自力で平均点を出して、学歴のところにつけました。また、応募フォームで学歴を打ち込むときは「公式のGPA以外は数字を書くな」とあったので、そこは空欄にしました。
  • どうでもいいですが、アメリカに送るのでLetterサイズの紙の方が良いのかと一瞬思いましたが、面倒なのでA4にしました。

学位証明

UoPeopleは卒業手続きをすると卒業証書と一緒にTranscriptが一通ついて来るので、それをスキャンしてアップロードしました。Transcriptは基本的に成績証明書ですが、最初に学位取得年月日(conferral date)が書いてあるので、これ1つで十分でした。あとTranscriptはDiplomaより厚い紙で立派でした。すごい。

  • 卒業手続きから出願まで2か月しかなかったので、120ドル払って確実かつ速く届くようにしておいた。Reddit情報では、UoPeopleからの書類は普通郵便だと数か月かかるとか、途中でロストするとか色々あるようなので。

日本の大学は郵便で取り寄せてスキャンしてアップロードしました。この大学の成績証明書は学位取得年月日が入っていないので、学位取得証明書を別に取得して成績証明書とあわせて一つのPDFにまとめる必要がありました。

  • あと学士・修士・博士の全てについて書類が必要だったのもちょっと手間だった。

推薦状3通(うち1通はUoPeopleの先生)

まず2通は現所属の上司(教授)と博士の時の指導教員の先生(教授)にお願いしました。博士の時の先生はUoPeopleに行っていることも知らなかったので、非常に驚いていました。そりゃそうだ。

  • OMSCSの公式ページでは「推薦状は応募者のCS能力を証明するためのもので、熱意とか頑張ってるとかそういうのはいいから」という文言があるので、それに合うように人選。
  • とはいいつつも、上司も博士の時の先生も、自分がプログラミングをバリバリやっているところを見ている訳でもない(そもそもそんなに書けない)ので、博士の時の先生には「この子はバイオ出身だけど頑張って統計とか独学してたし、研究室のサーバ管理してるRootユーザだったよ」と言ってもらい、上司には「こいつはバイオ出身だけど、うちの研究室のCSの学生と機械学習とか自然言語処理のテーマとかやってるよ」と言ってもらうことで、なけなしのCS力を証明して貰いました。弱い実務経験…。
    • 今時、機械学習はライブラリを使えばかなり簡単にできてしまうので、意外とサーバ管理やってた等々のエピソードの方が良いのでは?と勝手に思っています。まさか15年?前にNISサーバだのDNSサーバだの立ててたエピソードがこんなところで生きるとは。
    • 実はこの二人には「英語で下書きが欲しい」と言われた(それ自体は別に珍しくも無いので想定内だった)ので、ChatGPTに「大学の先生として院進学の推薦状を英語で書いてね!以下が候補者の情報だよ」という感じで日本語で上のような内容を一気に殴り書きして、英語で良い感じの文章を吐いてもらいました。ありがとうChatGPT!
      • また、この下書きを基に加筆した最終版を見せてもらったので、それをAI判定器にかけたら、ChatGPTが書いたところではなく先生が加筆した所や、先生の署名(!)がAI判定されたりしてかなり面白い感じになった。おそらく日本語から訳したものは完全に自動生成した文章と傾向が違うので検出できないのだろう。

最後の1通は誰から貰うか迷いましたが、思い切ってUoPeopleの先生にお願いしました。卒業直前に取ったInformation Retrievalの先生にUoPeopleのMoodle経由で事情を説明してお願いした所、二つ返事で引き受けてくれて、こちらの履歴書も送って見てもらって書いてもらいました。

正直なところ、この方の推薦状がどの程度有効だったのかは分かりません。なにせUoPeopleは完全オンラインかつクラスが大きめな分、先生はひたすら大量の学生をさばく感じなので、ある1Termだけ自分のクラスにいた個人についてどれほどのことが書けるかというと疑問です。

ただ、この先生以外の二人はバックグラウンドがCSではなく(物理とか化学とか)、自分にCSを教えた人でもないので、できればCSの人から1通は推薦状が欲しかったのと、Information Retrievalは自分が大学院で特にやりたい(と志望動機のところにも書いた)自然言語処理人工知能にも近いので、全然関係ない分野の先生から貰うより良いだろうと思って決断しました。あと成績も良かったし。

  • Data Mining and Machine Learningの先生に貰っても良かったのだけど、1年近く前に科目を取ってしまっていて、そんな昔の学生の推薦状は書きにくいだろうと遠慮してしまった。もし成績がずば抜けて良ければ、Artificial Intelligenceの先生にお願いしても良かった。

Webでの必要事項の記入

昔は履歴書に加え、BackgroundとStatement of Purposeについて少しまとまった量を書いて提出する必要があったはずなのですが、今はもうありません。以下の質問に答えたら終わりでした。とにかく短い。審査する先生方がいかにこれまで苦行を強いられてきたのかが、このそぎ落とされた質問群から伺い知れます…。ちなみにObjectiveでは該当がなければNoneと書けばOKです。

Objectives

  • Briefly describe your eventual career objective. (e.g., University Professor, Industry Researcher, etc.). 150 characters
  • Describe your CS-related academic experience. 200 characters
  • List any CS-related minors (or equivalent ACADEMIC certificates) earned with your academic degree. Enter "None" if none. 150 characters
  • If you have a non-CS/Computer Eng./Electrical Eng. Degree, list ALL (both undergrad & grad, if applicable) CS course titles that you took for ACADEMIC credit. 300 characters
  • Describe your CS-related internships, if any. 200 characters
  • Describe your CS-related post-undergraduate degree work experience. 250 characters
  • List your earned degrees and any minors. E.g., "B.S. Space Science with Math minor, Ph.D. Computer Science." 50 words
  • Explain in ONE sentence your purpose in studying in the OMSCS program. 50 words
  • Explain in ONE sentence how the OMSCS degree will benefit YOU. 50 words
  • Explain succinctly why your academic credentials and your CS-related experiences have prepared you for rigorous, graduate-level academic CS work. 60 words
  • Explain, IN DETAIL, a poor undergraduate GPA (and poor graduate GPA, if applicable) and why you would do better in rigorous graduate classes. "Poor" is defined as less than a U.S. institution's 3.0/4.0 or the analogous equivalent for a non-U.S. institution. 100 words

このうち、おそらく書くときに難しさを感じるのは、career objectiveやyour purpose in studying OMSCS、 あとはOMSCS degree benefitの辺りではないでしょうか。自分の場合すでにcareerがかなり確立してしまっているのと、degreeを持っている事そのものが昇進や転職などの利益になるわけではないので、「バイオ出身だけど研究分野の幅を広げたい!CS寄りのバイオインフォマティクス研究をやって生命科学を爆速で発展させたい!」「現役CS教員だけど学部も修士も博士もバイオだからもっとちゃんとCSのバックグラウンドが欲しい!」「ここで修士取ればCSの教員として自信を持てる!得た知識でもっとCS寄りの研究ができる!」みたいなことを素直に書きました。

  • とにかく50 wordsでは何も書けない(かといって履歴書に盛り込んでも読まれないだろうから、書き足りない分は上司の推薦状の方に入れ込んで貰いました)。

個人的なタイムライン

~2019年前半 OMSCSの存在を知る。この時点でTOEFLは102点あったが、CSのバックグラウンドが無く、学生指導・担当講義という点を含めても関連する実務経験がほとんどなかったので、おそらくこのままでは入れないだろうし、入ってもついていけないだろうと諦める。

2019年12月31日 UoPeopleの存在をはてなブックマーク経由で知り即入学する。UoPeopleはNationally Accreditedなのでそれだけでは要件を満たさないが、日本の大学卒と組み合わせることでOMSCSの足掛かりにできないかと密かに計画する。そういう意味では、自分のOMSCS出願準備はここから始まったと言えなくもない。

2023年1月11日 無事120単位を揃えてUoPeopleの卒業ボタンを押す。

1月14日 卒業を見越して前年8月の時点で予約しておいたTOEFLを受ける。受験直後のRとLのスコアで、出願資格を満たしそうだと確信し、3月15日出願を目指す。まずは適当にフォームを埋める。

1月21日 TOEFL結果出る。推薦状の手配を始める。日本の大学の学位証明の手配も始める。

2月4日 UoPeopleから書類が届く。

2月中旬頃 ChatGPTとAIの威力に今更気づく。これからAIがますます強力になっていくなかで、大学院で何を学び、今後どうしていきたいか、これまで漠然とcareer objectiveに書こうと思っていた事柄が、もはや幼稚な戯言に変わってしまったのをようやく理解しショックを受ける。情報系としての今後のキャリアも含めて、真剣に何をすべきか考え直し始める。しばらく準備が手つかずになる。

2月下旬 日本の大学から書類が届く。

3月初め これまでの人生で感じた、情報系とバイオ系にまつわる多くの事を振りかえり、このAIの大波の中で自分が何をしたいか(=世界が今後どうあっていて欲しいか)の言語化にようやく成功し、career objectiveが定まる。

3月上旬 実務経験の弱さ(=あまりCSスキルが高くなく、自分自身ではCS色の弱い研究しかしていない)をカバーするために、履歴書で担当講義科目と指導学生の研究テーマを列挙することを思いつく。改めて整理したところ、学生指導の数が2019年の時点から爆増していただけでなく、内容もバイオ成分がかなり薄まっていて、機械学習を使った多様な応用研究という感じのリストになった*1ので、これはCSの学生とCSライクな研究をしていると言って構わないだろうと開き直る。

3月15日午前1時ごろ 応募する。その後の自動返信メールで、今回の合格通知期間は3月27日の週から5月末までらしいと知らされる。

3月27日 Redditで合格発表の第一陣が届いているのを観測する。

4月初旬~中旬 どうやら今回は毎週月曜日に通知がリリースされているようだが、自分の所にはぜんぜん来ないので駄目だったのかと思い始める

4月24日午後11時 申請ウェブサイトをリロードしたら通知を発見し感激する

 

とりあえず今は入学手続きを間違えないか不安なのと、1年目の成績が悪すぎてドロップアウトしないかが心配でしょうがないです。

  • 易しい科目を血眼になって探してみたり、「でもみんなの言う易しいは自分にとって易しいではない可能性結構あるからな…そもそも新入生は履修登録すごい後だから空いてるところに行くしかないし…」とぼんやりしてみたり、の繰り返し。

*1:この辺、事情を知っている人たちからは「なぜそんな大幅に専門(バイオ)を逸脱した多様な分野を指導できるんだ」と言われたりする。